
海外では盛んなクラウドファンディング
インターネット経由によって、不特定多数の人が個人または組織に資金の提供や協力を行うクラウドファンディング。商品開発のアイデア・スキルはあるがお金の無いクリエイターや起業家が資金を集めるのに用いられている。日本で始まったのは2011年頃で、規模はまだ小さいが、海外には膨大な金額を集め、起業家をも輩出するクラウドファンディングサイトが多数ある。今回は、海外の有名なクラウドファンディングのサイト、資金調達の事例を紹介する。
Kickstarter
1件で約2033万8986ドル(約20億8000万円)という史上最高額を調達した事もあるアメリカが本拠地のKickstarterだ。この金額は2015年3月にスマートウォッチのPebble Techが立ち上げた新端末プロジェクト「Pebble Time」で達成したものだ。その前年にCooleset Coolerのプロジェクトで約1300万ドル(約13億3000万円)を集め、2012年にもPebble Techのプロジェクトで約1027万ドル(10億5000万円)を集めた実績がある世界最大級のサイトである。
Indiegogo
Kickstarterと並んでアメリカの2強クラウドファンディングと呼ばれるのがIndiegogoだ。運用開始は2008年で、世界で最も古くから存在するクラウドファンディングサービスの1つだ。これまでに集めた金額の累計は約8億ドル(約1000億円)にもなる。Indiegogoのキャンペーンがキッカケとなり、その後、ベンチャーキャピタルから出資を受ける事になったスタートアップも多く存在する。その額も累計約5億ドル(約600億円)にも上り、例えば、ロボットのJiboは約6000万ドル(約72億円) を調達しており、Indiegogoから誕生した巨大ベンチャーと言えるだろう。
Crowdfunder
2011年12月にLAで設立したCrowdfunderは、アメリカ資本主義経済の革命児と呼ぶ人もいるベンチャー企業だ。共同経営者兼CEOのChance Barnett氏は「米国GDPの50%はスモールビジネスが作り出しているにも拘わらず、これらのビジネス領域に対し、米国全体でわずか2%の資本しか供給されていない」と話すなど、スモールビジネスに資金を援助する事の重要性を説いている。
RocketHub
サイトのメンバーは有名ブランドや企業と共同して潜在的な支援者にアピールし、より多くの資金を獲得する事が出来るのがRocketHubだ。ビジネスというより、アートや社会性の高いプロジェクトが多いのも特徴だ。目標額を達成出来なかった場合は8%、成功したプロジェクトでも4%の手数料がチャージされる。
Crowdrise
Crowdriseは対照的で、社会問題に力を入れているサイトだ。例えば、動物愛護・文化教育・医療・宗教といった内容だ。その為、慈善事業専用のサイトとされているが、誕生日会・結婚式・同窓会などの個人プロジェクトに使われる事もある。寄付をした人数に応じてポイントを得る事が出来るポイント制を導入している点が特徴である。
SoMolend
SoMoLendは、クラウドファンディング型のビジネスローン提供プラットフォームだ。地域の起業家や事業者に向けて、既存の金融機関に代わる資金調達プラットフォームとなっている。その為、事業者は必要な資金額やビジネスの概要に加え、ビジネス実績・クレジットスコア・ローン残高といった情報も求められる。
Appbackr
Appbackrはその名の通り、モバイルアプリ開発の為のクラウドファンディングサイトだ。開発中のアプリに対して投資家が資金を拠出する。実際に、販売が開始されて高い価格で売れれば、投資家にその利益が還元されるという仕組みである。
AngelList
起業家とこのエンジェル投資家を繋げるSNSがAngelListだ。Angel(エンジェル)投資家とは、創業間もない企業に対し、資金を供給するな個人の投資家のことだ。スタートアップ企業に投資したエンジェル投資家が自らの投資実績を公開し、投資してもらいたい起業家が株主情報を実名で公開するサービスである。
Invested.in
アメリカで2010年に始まったInvested.inは、募集ジャンルにほとんど制限が無く、寄付を含む、あらゆるプロジェクトを対象とする守備範囲の広いサイトだ。All or Nothing 型 と Perks-based型という2つのキャンペーンタイプを採用している。
Quirky
最後に悲しい話をしなければならないのが10位のアメリカ・Quirkyだ。個人が商品アイデアを投稿でき、資金支援者から支持を集めて商品化されればロイヤリティを得られるというサイトで、登録ユーザーは 113万人、実際に400以上の商品化されてきた実績がある。しかし、2015年9月に倒産手続処理の申請を行ったのだ。クラウドファンディングが一筋縄で実現できるものではないことが伺えるだろう。
今後の日本のクラウドファンディング
いかがだっただろうか。以上のように海外、特にアメリカではクラウドファンディングで1つのプロジェクトに十億円以上という巨額の資金が集まることは稀ではないし、クラウドファンディングにより資金調達をし、ベンチャー企業が数多く生まれている。アメリカと比較すると日本のクラウドファンディングはまだまだ小規模ではあるが、昨今のクラウドファンディングの活況を考えると、Indiegogoから資金調達し、巨大ベンチャーになったJiboのような事例が日本で生まれる日も遠い未来ではないのかもしれない。