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事業承継に備える経営者の一手 相続時精算課税制度

(写真=Thinkstock)
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閉鎖会社・同族会社のオーナー社長が後継者に事業を承継させる場合、相続財産の評価等の相続対策と、後継者の育成等の会社の存続・発展が課題となる。

事業承継対策として経営者が是非とも知っておきたいものが、贈与税の特例としての「相続時精算課税制度」である。とりわけ暦年贈与(年間110万円の基礎控除)が使えなくなるなどのデメリットが目立つのだが、2,500万円まで無税で子や孫に贈与する事が出来ること、相続が開始した時に相続財産に加算されることは大きなメリットである。今回は、相続時精算課税制度の基礎知識、メリット・デメリット、想定される利用ケース・利用しない方が良いケース、税務申告手続き等について検討する。

相続時精算課税制度とは

相続時精算課税制度とは、60歳以上の祖父母や父母から20歳以上の子や孫への贈与をする場合において、2,500万円までの贈与であれば贈与税が非課税になる制度の事である。

2,500万円を超えて支払った贈与税は将来の相続税から控除する事ができ、一律20%の贈与税がかかる。20%とはいえども、自社株価が高い水準にある際に全ての株式を贈与するには、多額の納税資金が必要となる。

また、一括して2,500万円を贈与しなければならないわけではなく、生涯にわたって財産の種類・金額・回数・年数に制限なく、贈与した額が2,500万円までであれば、贈与税は非課税になるのである。贈与者ごとに適用されるので、父からの贈与は暦年課税・母からの贈与は相続時精算課税とする事も出来る。ちなみに、贈与する財産が一定の要件を満たす住宅取得資金の場合には、贈与者の年齢に制限は無い。これを相続時精算課税選択の特例と言い、平成31年6月30日まで延長された。

自社株対策と相続時精算課税制度の活用

自社株価の引き下げには、利益の圧縮・配当の減配・純資産の削減の方法があり、これらの組み合わせを計画的に行う事によって、自社株の評価を大幅に引き下げられるのである。

決算の度に自社株対策を行い、相続時精算課税制度を活用して計画的に自社株を後継者に贈与していけば、相続開始時に自社株の評価が下がったままの状態で相続税額が計算される為、相続税対策にも資する事になる。

さらに、株式承継にとって相続時精算課税制度を活用するもう1つのメリットは、自社株の株価算定基準が、相続時ではなく贈与時の数値が使われる事である。例えば、株式贈与時の株価が1,000円で、その後会社が急成長し、日経平均株価も大幅に伸び、自社株の株価が100,000円になったとしても、相続時の課税評価は贈与時の1,000円を基準に計算される。コツコツと暦年贈与を続けて行き、株価を引き下げ、後継者教育を行いつつ、ここぞというタイミングで相続時精算課税制度を使い、一気に自社株を後継者に渡して行くのである。つまり、暦年贈与+相続時精算課税制度という戦略的な組み合わせによって税負担を軽減しつつ、事業承継を完結させる事が出来るというわけである。

注意事項

まず、特定の贈与者が一度相続時精算課税を選択すれば、それ以降は暦年贈与に戻れなくなる事には注意が必要だ。

また、相続時精算課税制度は自社株の株価が高騰している場合に、自社株対策と組み合わせて活用すれば有用な制度であるが、逆に、自社株が値下がりしたような場合には、相続時精算課税制度を利用せず、暦年贈与を取っていくと有利となる。相続時精算課税制度を利用して生前贈与する事によって、事実上の遺産分割が相続の開始する前に出来る事になるのだが、この場合には、推定相続人の遺留分を侵害する事の無いように注意しなければならない。

さらに贈与時に2,500万円を超える贈与を受けたとして贈与税の申告・納税し、相続開始時に相続財産が相続税の基礎控除内であれば相続税の申告は不要であるが、すでに納税した贈与税の還付を受けようとする場合には、課税されなくても相続税の申告をしなければならない。

以上のように、事業承継対策にはさまざまな方法があり、これこそが正解というものが無いからこそ、自社の経営状況を整理、事業承継のパターンを理解して、早い時期から戦略的な対策を講じていく事が肝要である。