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事業承継の失敗 責任の所在は創業者か後継者か

(写真=Thinkstock)
(写真=Thinkstock)

事業承継の失敗を論じる時、概ね世論はこう断じる。「後継者がその器ではなかった・・・」と。

確かに、後継者は経験と器にそぐわない会社を引き継ぐことになる。しかし、後継者の立場としては、世の多くの意見にスッキリ納得できないことも多いはずだ。

なぜなら、事業承継とは本来「共同作業」であるからだ。

後継者に不利な情報が流布される3つの要因

確かに、後継者が否定されやすい要素はたくさんある。

なんといっても百戦錬磨の創業者と比べると、圧倒的に後継者の経験値は少ないといえる。そのことは多くの後継者の方も受け入れざるを得ない現実として、真摯に受け止められている事であろう。

また、一部の後継者が、実際に放蕩息子を絵に書いたような振る舞いをしているのも事実である。多くの後継者は、真摯に事業に向き合っているものの、こういった一部の人たちの印象が世間に強く印象付けられている状況があることは否めない。

それを差し引いたとしても、不自然なくらい先代が正しく、後継者が間違っているといった論調が多いように思えてならない。その背景を考えてみると、以下の三つの理由が考えられる。

1.経済原理の影響を受ける

書籍やネットにおける情報は、その著者のビジネスに誘導するものが多いと考えられる。

具体的には、税理士、弁護士、コンサルタントなどにおいては、事業承継の資産移転などに関するビジネスに誘導する目的をもって情報を開示しているケースが多いように見受けられる。当然、これらの人たちは、資産を形成し、会社の実権を握る創業者の味方であることを強調する。

その結果、情報の多くは創業者に偏ったものが多くなる傾向を持っているといえそうだ。

2.後継者を叩く方が世の中の共感を得やすい

社長の息子であるという理由で次期経営者の最有力候補という状況に、妬みを持つ人は少なからず存在する。

多くの人々の共感を得る事でビジネスを成立させているのがマスメディアだ。苦労の人という創業者を悪く報道するより、親の七光りで経営のポストに就く後継者を叩く方がビジネスとして成立しやすい。

3.創業者は比較対照する人がいないが、後継者は先代との比較にさらされる

創業者はゼロからスタートしているため、誰にも干渉されず、誰とも比較されず、自分のペースでビジネスを作ってきたケースが多い。

言わば、社会において「無名」の状態でデビューするようなもので、ビジネスにおいて途中で挫折した時、周囲の目はほとんど創業者に注目さえしなかったケースが多い。一方、後継者は「創業者の子供」であるところからのスタートとなる。つまり、まったく未経験の状態から、注目を集めている状態でのスタートになり、その一挙手一投足を誰かに見られている。

このような状況で、完成された創業者と比較対照されるため、どうしても力不足感が目立つことは否めない。何かを始めれば、抑止する人が出てきたり、反対する人が出てきたり、ひどい場合には会社から追い出そうとする人が出てきたりするわけだ。

これはまさに後継者特有の悩みといえるのではなかろうか。

それを振り切ろうとすれば、「先代をないがしろにする」などど言われる訳だから、八方ふさがりとなる。試行錯誤でビジネスを軌道に乗せた創業者と、試行錯誤が許されず誰もが認める王道を歩まざるを得ない後継者の境遇の隔たりをここに感じざるを得ない。

「失敗(チャレンジ)を重ねることが前進を意味する」という視点で見ると、後継者は前進しようとする先には、周囲の目という大きな壁が立ちはだかるのだ。

事業承継は共同責任

とはいえ、その程度の壁を越えられなければ、後継者は務まらないという意見もあるだろう。それはそれでもっともな話である。

しかし、実際に事業承継で失敗が起こり、それを後継者だけの責任にされることが多いが、これはあまりにバランスを欠いているだろう。こういった事情が、後継者のモチベーションを下げたり、道を迷わされている遠因になっていることは否定できない。

そもそも、事業承継とは、本来共同作業のはずなのだ。

事業承継を「バトンタッチ」と表現する事が多いが、バトンタッチはあくまで渡す側と、受け取る側の息が合わなければ上手く行かない。

今の中小企業の事業承継を見ていると、傾向としては、

”本来バトンタッチする場所で創業者がバトンを渡すことなく、「走れるところまで走る」といって走り続ける。トラック2周目に入ったものの息切れしてやむを得ずバトンを渡す。”

こういった様子を目にすることが多い。

伴走した後継者も、走りぬいた創業者も、その頃には疲弊しておりその状態で、「あとは任せた」というのはあまりに都合がよすぎる話ではなかろうか。そうならないためにも、本来あるべきタイミングでバトンを渡す事が肝要なのであり、創業者はそのタイミングを見誤ってはいけない。

共同作業である以上、共同責任なのだ。

当然、後継者もバトンが渡されるのを、ただ待っていることで責任を果たせたとは言えないことが多いであろう。なぜバトンが渡されないかについて、コミュニケーションを図り、熟考することを忘れてはならない。

さて、このコラムを読んでいただいている読者の方々は、まだ「事業承継の失敗」に至ったわけではない方ではないかと思う。もし感じるところがあるとすれば、双方責任逃れの言い訳をせずに済むよう注意されたい。

田村【筆者プロフィール】田村 薫

自らの二代目経営者という立場における経験を社会に還元すべく、情報発信を行う。ブログ・  ワークショップの開催などを通じて経済の発展に寄与する後継者サポーター。

■親と子の心をつなぐ事業承継  http://jigyo-shokei.com/

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