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日本に広がる「不寛容オフィス」の実態とは?

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(写真=The 21 online)

残業、ラーメン、タバコ……すべてを一律に禁じようとする愚

本来、オフィスは多様な人間が集まるところ。だが、どうも最近の日本企業は「不寛容」になっていないだろうか……。ルールの厳密化によるトラブルや社員間の確執など、現代の「不寛容オフィス」の実態について、THE21編集部に寄せられた声を元に再現する。

「不寛容社会化」していく日本

昨年のNHKスペシャルでも取り上げられた「不寛容社会」という言葉が話題になっている。

「不謹慎」の名のもとに何気ないひと言が炎上したり、企業が謝罪に追い込まれたりする。高崎山のサルにイギリスのプリンセスの名前をつけ「不謹慎」などと非難される。熊本の震災で自分の苦しみをSNSでつづった著名人が「他にももっと苦しんでいる人がいる」などと批判を浴びる……。

これは主にネットの世界の話ではあるが、同時に、社会全体が不寛容になりつつあるように思える。そして、その波はオフィスにも確実に押し寄せているようだ。

仕事があるのに入れない! 残業削減を巡るドタバタ

広告代理店での不幸な事件もあり、「残業削減」の動きはますます強まっている。中には「定時になると強制的に電気を切る」という強硬手段に出る会社も。ただ、こうした取り組みは業務効率化と同時に進めてこそ効果があるもの。形だけ真似すると、かえってトラブルを招く。

「定時を過ぎると電気が消されるだけでなく、冷暖房まで止められてしまいますから、仕事になりません。とりあえずノートパソコンを持って近くの喫茶店に避難し、そこで仕事を続けています。同じような人は結構多くて、喫茶店が『第二オフィス』なんて言われていますよ」

某メーカーに勤めるA氏はこう愚痴をこぼす。ただ、これはまだマシかもしれない。情報管理が厳しい会社になると、社外へのデータや資料の持ち出しは一切禁止。それでいて定時に帰ることが義務づけられる。その結果、早朝出勤が不可避になり、労働時間はほぼ変わらない、というケースもあるようだ。

会社にダラダラ残ることは褒められたことではないが、必要なときにすらオフィスにいられないというのは、まさに「不寛容」としか言いようがない。

コンプライアンス強化でハンコの数が激増!

この例のように、コンプライアンスの名のもとにルールにがんじがらめにされる企業も増えている。最近、コンプライアンス室が強化された企業に勤めるF氏はこう話す。

「とにかくハンコが増えたんです。今までは上司と役員のハンコだけでよかった案件が、コンプライアンス室や監査部、そして経理部のハンコまで必要になった。しかも旧態依然の紙の書類で回すのがルール。決裁にかかる時間は数倍になりましたね」

同時に、社員が自主規制をかけているのか、斬新なアイデアが生まれにくくなってしまっているという。コンプライアンスはもちろん大事だが、まず「規制ありき」の職場では、誰ものびのびと働くことはできない。

常に針のむしろ!? メタボへの厳しい目

一方、会社の過剰な干渉に音を上げる人もいる。最近は「メタボ検診」が企業で行なわれるなど、社員の健康管理も会社の義務という認識が広まっている。だが、「やりすぎ」となると、どうも窮屈になってしまうことは避けられない。

「うちの会社では健康診断で『要注意』とされた社員全員に歩数計が配られ、一日何歩歩いたかを報告しなくてはなりません。しかも、社内のそこかしこに『階段を使ってメタボを撲滅しよう』などというポスターが貼られている。もちろん健康管理が大事なことはわかっているのですが、常に責められているようで、気力も萎えてきます」

そう話すのは広告代理店で働くS氏。入社以来20年で20キロ以上体重が増えたというが、残業の連続でなかなか生活に気を配ることができない。この会社は社長が「健康マニア」で、毎日ジムに通っているという。口癖は「アメリカでは肥満の人は『自己管理ができない』と見なされ、評価されない」。

「先日は机の上に『なぜ一流の男の腹は出ていないのか?』という本が置いてあって、自分への当てつけかと思いましたよ(笑)。もっとも、他にもメタボ気味の社員が多いので、会社が危機感を持っていることは事実だと思いますが」

社員の健康管理は大事だが、やりすぎて社員のモチベーションを下げてしまっては本末転倒だ。また、ユニークなメタボ撲滅ポスターを作成している企業もあるが、場合によっては体型による差別を助長していると捉えられかねない。

音もにおいも不快! ヌードル・ハラスメント

40代のNさんはカップラーメンが大好物。だが、最近どうも肩身が狭い。「昼食時にラーメンをすすっている音がうるさい」「においも気になる」と女子社員から人事部へクレームが入ったというのだ。

女子社員たちは別の場所で食事をしており、直接的に被害をこうむっているわけではない。だが、「席に戻った瞬間にラーメンのにおいが残っている」ことすら我慢ならない、ということなのだ。

「以来、なるべくにおいの出ないものを食べていますが、そこまで気を使わされると何を食べてもおいしくなくなりますよね」(N氏)
ちなみにこうした「ラーメンの音」による被害を指す「ヌードル・ハラスメント」という言葉もある。気をつけよう……と言いたいところだが、なんとも窮屈な話ではある。

ルールを守ってもダメ!? タバコへの不寛容

昨今はいわゆる「分煙化」が進み、喫煙室や喫煙場所が別途設けられているオフィスがほとんどだ。にもかかわらず、タバコを吸う人への風当たりが強くなっていると感じる人は多い。喫煙者であるM氏は語る。

「喫煙室は会社の端にほんの少しのスペースしか占めていないのに、さも迷惑そうな顔で横切っていったり……。においが気になるといったクレームを人事に上げている人もいるようです。きっちり分煙もされていて、そんなはずはないのですが。

もっとも、大半の社員は気にしておらず、ごく一部のタバコ嫌いの人が騒いでいるだけのようですけどね。それでも、反論しにくいのが現状です」

人に迷惑をかけなければ、リラックスのために何をしようが自由なはず。喫煙室でのコミュニケーションは社内の円滑化に一役買っているという説もある。

ちなみに厚生労働省では、「喫煙後は遠回りして、においを落としてから帰る」というルールすら設けられたという。すべてを否定しようというこの動き、あまりにも偏っていないだろうか。

若手からの「テクハラ」で力関係が逆転?

技術の進歩が著しい現代、ミドル以降の社員はついていくのに精一杯。一方、デジタルネイティブ世代は新しいツールを軽々と使いこなす。流通会社のベテラン社員T氏はこうこぼす。

「若い頃にちゃんと修得しなかったせいで、いまだにワープロは一本指。新入社員が笑っているのは知っていますよ。『よくそれで打てますねー』なんて言われたりして、結構傷ついているんですよ」

最新技術についていけない人に対する「テクノロジー・ハラスメント」なる言葉も存在している。中にはわざとわからないようなIT用語を連発し、けむに巻こうとする若手も。世代間の対立はどんな時代にもあったが、基本的には年長者が「経験と情報」で若手を押さえつけてきた。だが、現在は若手が「テクノロジー」という武器で40代、50代を翻弄する。

会社人生を全否定!? エイジ・ハラスメント

「テクハラ」よりもさらに直接的な攻撃もある。それが「エイジ・ハラスメント」、通称エイハラだ。年齢による差別を指すが、多いのは定年間際の社員への「当てつけ」だ。

一般に多くの企業では55~60歳で役職を外れる。今までは役職者と呼ばれていた人が通常業務に就くと、傍から見るとサボっているように見えるらしい。H氏もそんな目で見られている一人だ。

「『のんびりできていいですね』なんて言われると、やっぱり腹が立ちますね。別に好きで役職を降りたわけではないですし、給料だってそれ相応に下がっているわけですから……」

また、先行き不透明な時代、年金にしても退職金にしても、「本当にもらえるのだろうか」という不安を持つ若手や中堅は多い。そのフラストレーションが定年間際の社員にぶつけられることも。前出のH氏は言う。

「『逃げ切れていいですね』などと面と向かって言われたこともありますよ。そりゃ、若い人は大変だなと思います。でも、こうはっきりと言われてしまうと、今まで会社のために働いてきた自分の人生を全部否定されたような、悲しい気分になってしまいます」

大勢の人が働くオフィスだけに、互いに過ごしやすいようルールを守ることは必須だ。だが、それが行きすぎて人間関係がぎくしゃくしてしまう「不寛容なオフィス」になってしまってはいないだろうか。

今、世の中は「多様化」の時代だ。自分と違う常識を持った人たちともうまくやっていく「包容力」もまた、必要なのではないだろうか。(『The 21 online』2017年1月号より)

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