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<連載>中国人エリートの「グレーゾーン」での戦い方・第2回「心は許さず、身体は許す!?」

日本人よ、「バッターボックス」の中に立て!

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(写真=The 21 online)

世界経済の中で、着々とその存在感を増しつつある中国企業。その力の源を、人口の多さ、市場の巨大さだけに求めるのはもはや時代遅れだ。中国人エリートたちはすでに、日本人が太刀打ちできないほど高いビジネス能力とグローバルな視点を身につけている。上海に住み、中国で二つの会社を経営する江口征男氏は、「彼らに立ち向かうため、日本人は中国人特有の『グレーゾーン』の考え方を学ぶべき」と語る。多くの中国人と戦ってきた江口氏が説く、「グレーゾーン思考」とは?

どんな相手の誘いも断らない中国人エリート

「身体を許しても心は許さない」という言葉があります。

一般的には浮気はするけど本気にはならないという意味で「心は許さない」のほうが重要だと思いますが、ビジネスでは「身体を許す」方が重要です。

特に自分にとってアウェイの環境では、ビジネス上重要な、知り合って間もない相手と身体の関係を持つくらい相手に近づく(少なくとも近づこうと努力する)ことが大切なのです。当然、家族や親友でもない赤の他人と親しくなる前に、そこまで近づくのは危険です。相手に騙されたり、被害を被るリスクが高くなるからです。

それでも中国ビジネスのエリート達は、危険を承知であえて相手に近づいていきます。そして逆に相手に誘われたら、警戒しながらも、一度は誘いに応えてみるのです。

中国でビジネスをしていると、多くの日本人はバッターボックスの後ろに立っていると感じます。デットボールが怖いので、それを避けるためにバッターボックスの後ろに立ちたい気持ちはわかります。しかし、それでは外角のボールにバットが届きません。まぐれでヒットは打てても、ホームランを打つのは無理でしょう。

そもそもホームランを狙わないのであれば、わざわざリスクのある海外ビジネスでバッターボックスに立つ必要はないのです。それでもあえて打席に立つと言うのであれば、デットボール覚悟で、しっかりプロテクターをして致命傷にはならない準備をした上で、バッターボックスの前に立ち、ホームランを狙うべきではないでしょうか。

中国人パートナーを「信用」せず、「信頼」する

危険を覚悟で、相手の懐まで近づくと見える景色が変わります。テーブルを挟んでにこやかに会話をしながら、テーブルの下で蹴り合いをする関係になることで、これまで見えなかった相手の本音が見えてくるからです。相手の本音がわかることで、より率直に深く正しく付き合うことができ、よりよいwin-winの関係が構築できるようになるのです。

ただ、利害関係のない相手、相手と利害が一致しているタイミングでは、相手と話が弾むのは当たり前です。ガチのグローバルビジネスで成功するためには、利害が対立している相手に対してこそ、自分がどういう態度を取るのか、どういうところで折り合いをつけられるのかが重要なのです。

私は現在中国で、中国人パートナーと2人で会社を経営しています。彼とはかれこれ8年くらい共同経営を続けていますが、ここだけの話、私は彼を100%「信用」しているわけではありません。その代わり彼のことをとても「信頼」しています。今後もずっと一緒に共同経営を続けたいとさえ思っています。

これまでも彼との間に小さな利益相反は何回もありましたが、その都度、お互いに相手を思いやりながら率直に話し合ってきたことで、大きな問題になる前に解決してきました。これまで彼との共同経営がうまくいっている理由の1つが、心の底までは許さずとも、身体を許し合う関係になれているからだと私は思います。

江口征男(えぐち・まさお)GML上海総経理
Tuck (Dartmouth) MBA。横浜国立大学大学院工学研究科修了。外資系経営コンサルティング会社、子供服アパレル会社を経て2007年より中国上海移住。現在上海にて経営コンサルティング会社2社(GML上海、Y&E)を経営。著書に『中国13億人を相手に商売する方法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。中国ビジネスに関する講演、執筆多数。(『The 21 online』2015年11月13日公開)

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