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こんな時代だから知りたいM&A(第9回)

─ M&Aコラム応用編 ─ M&Aの疑問にお答えします!!

M&A
(写真=Biglife21)

続・その④/売却金額は高ければ高いに越したことはない!?

前回は、売却金額を高く売るためのM&A方法論として、入札方式と相対方式を解説しました。

簡単に前回のおさらいをしておきましょう。

入札方式

M&Aの進行方法のひとつ。売却案件に対し、複数の買収希望会社が入札によってもっとも良い条件を提示した会社を最終的な買収会社とする方法。

この場合の条件には買収金額のほか、スキーム、買収後の経営方針なども選考の対象となるため、必ずしも最高価額を提示した会社が落札者になるとは限らないが、一般的には相対方式と比べて価額は高く決着しやすい。

オークション(競売)、コンペ、ビッド方式などともいう。

相対方式

M&Aの進行方法のひとつです。売却案件に対し、1社ずつ順に買収希望会社と交渉をしていき、掲示された条件が売る側にとって満足のいくものであれば売買契約を結ぶ方法です。

良い相手に恵まれればオークション方式と比べて交渉にかかる時間を節約できるなどのメリットがあります。

M&A仲介会社は仲介方式、マッチング方式などとも呼んでいます。

以上のように高く売るためには、M&A方法論によっても左右される側面があります。

それでは《売却金額は高ければ高いに越したことはない!?》という疑問に別の角度で検討を加えていきましょう。

高く売却されるということは、売り手企業のオーナーや売却側のM&Aアドバイザーの立ち位置から見れば理想的に思える結果が、別の角度から見れば実はそうでもないという事実にも目を向けておく必要があります。

例えば、残された従業員はどうでしょうか?

M&Aのもう一方の重要課題、M&A売却後のアフターM&Aからの視点です。残された従業員にとってはあまり高値で会社を売却されることは従業員に多くの負担がのしかかる可能性があるということです。

基本的に経営者自身は会社売却と同時にその会社から去ることになりますが、 従業員の多くはその後も会社に残ることになります。

高値で会社を売ると残された従業員は買い手のプレッシャーの中で苦労することが多いのです。

売り手が高値で会社を売却したということは、買い手からすれば、高い買い物をしたということになります。

買い手は、高い買い物をした以上、それ相応の見返りを、買い取った会社に求めてきます。投資のリターンを求めるのは経営上必然の帰結です。

よって残された従業員にとっては、実態以上の高値で買われた場合、何とかそれに見合った成果を出さなければリストラなどの圧力がかかっていきます。

仮に上手く成果を出すことができても、もともとの原価(買収価格)が高いため、それくらいは当然の成果として、大きな評価を得ることもありません。

富を得て会社を去った経営者だけがいい思いをして、残った従業員が苦労する。これでは、経済的な利益は得られても、社会的な名誉や評価、評判はガタ落ちです。

経営者にはこのような事態まで考えた会社売却の本質を知っておいていただきたいのです。

やはり、あまりに高値で売却すれば、どこかに歪みがでてきます。

会社売却・M&Aとは経営者自身の経営理念(クレド)、経営姿勢がどうだったかということの総決算ともいえる場面かもしれません。

アメリカ型の株主重視型経営? 欧州型のステークホルダー重視? 会社は「公器」なのか? あるいは「利潤創出」のための手段なのか?

まさしく経営者の経営理念、経営哲学がそこに問われています。

当社は「経営コンサルティング会社」を母体としたM&Aコンサルティングを長年実施してきました。

よって、単なる目先の利益だけではなく、複眼的に経営者の決断をお手伝いし、深くご自身の経営理念、哲学を鑑みる「鏡」のような存在として昨年開業25周年を迎えています。

最後はどれだけ「経営」とは何かをご自身に深く問いかけてきた経営者のM&Aは成功したケースが多いと実感しています。

今回はここまで! 次回もM&Aコラム応用編【M&Aの疑問にお答えします】お楽しみに!

(提供:Biglife 21)

秋尾星獅(あきお・せいじ)…1961年生まれ。55歳。独立系経営コンサルタント会社に在籍後、1991年仲間と現在の会社前身である経営・マーケティングコンサルティング会社を起業。2000年からIPO(株式上場)支援コンサルティング。2004年からM&A支援コンサルティング業務をそれぞれ本格稼働させる。2007年には社名を株式会社IPO・M&Aコンサルタントグループに変更。現任IMグループ取締役会長。

 

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