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こんな時代だから知りたいM&A(第10回)

─ M&Aコラム応用編 ─ M&Aの疑問にお答えします!!

M&A
(写真=Biglife21)

その⑤/売り手企業売却の心構えは?

今回からは、売り手企業売却の心構えをいくつかお話したいと思います。

M&Aの検討を進めるにあたって、自社内の例えば不正や事件といったレベルではないものの、できれば外部に明らかにしたくないような不都合な事情や不名誉な事実がある場合です。

そういったマイナス情報をどう対処するか。

そのためにはM&A契約した後にも訴訟リスクがあることなどを深く理解する必要があります。

M&A契約が締結された後で、もしマイナス情報が判明した場合には、明らかになった内容にもよりますが、

売り手が意図的に隠していたというような最悪の事態であれば売買譲渡契約書で明記される「表明および保証」(表明保証)で契約を交わされる保証条項に違反することになります(今後の連載M&Aコラム応用編で詳細解説します)。

そうなれば少なくとも買収価格を減額し譲渡代金の一部を払い戻す必要が出てきます。

経済的な損失面での影響度合いが軽微で金銭的な調整までは必要ないとした場合でも、買い手に対する道義的な責任を欠いた行動をとったことで、

その後の円滑な引継ぎには支障が出るうえ、残された従業員にも悪影響を与えることになります。

マイナス情報を隠すことは「百害あって一利なし」なので絶対にやってはいけません。

不都合な事情や不名誉な事実といったマイナス情報であればあるほど、M&Aの契約締結までの適切な時期に売り手側から買い手に対してキチンと情報開示しておく必要があります。

よって売り手企業売却の心構えの一つ目として、〈1:企業の内情をさらけ出す覚悟が必要だ!〉といえます。

ただし、交渉の初期段階でマイナス情報を漏れなく開示しなければならないということではありません。

そのマイナス情報が企業価値をどのくらい毀損(きそん)するのかというその度合いに応じて、交渉上のカードの切り方を工夫し賢く開示していくことは必要になります。

◆たとえば当社が扱ったM&A事例としては、従業員に親族がいるが社内評価は低い、といった場合です。

親族、身内ゆえに社長として評価が甘くなっていた場合ですが、その場合は当該社員が環境を変えることで潜在能力が開花する可能性があるのか、それとも難しいのかという判断を冷静かつ客観的に下す必要があります。

そのうえで当該社員がM&Aの契約後も従業員として残るのかどうか交渉の中で明確に決めておく必要があります。

場合によってはM&A契約締結までに退職させるか、変則的な付加条件として「何年間か従業員の地位と給料を保証する」かのどちらかになります。

◆次の具体的事例としては、従業員同士の反目がある場合です。

規模の小さい中小企業であれば、大会社でみられるような派閥争いはないでしょうが、一部の社員同士が反目しているような状況は、ない話ではありません。

場合によってはM&Aの検討情報がもれて主導権争いや一部社員の離職など社内の波乱が起きる可能性もあります。

M&Aの検討は、ある意味で会社の健康診断を行うという側面があります。

M&Aは売却する社長だけが自分のエゴ丸出しで高く売れさえすればいいという交渉は当社過去の経験上ほとんどうまくいきません。

M&Aの事前交渉あるいはM&A事後に不思議とトラブルが発生します。

当社は経営コンサルティング会社を母体としたM&Aコンサルティング会社なので会社の健康診断の重要性を特に感じます。

売り手企業の社長としてはM&A検討という会社の健康診断で発見された問題を前向きにとらえ、売却を延期して社内の体制の再構築と強化にあて経営計画を練り直して会社の健康を取り戻し、より高く売却できる会社としてM&Aにのぞむことが大切だと思います。

〈2:M&A売却検討を自社の経営診断に利用せよ!〉

例えば、売り手社長が知らないところで従業員が不正を働いている可能性は誰も否定できません。

売り手である社長が非常に正直な方で曲がったことや道義的に間違ったことが大嫌いな性格で信頼できる人物であっても、企業にはいろいろな人が存在し、社長の目が届かないところに思わぬ落とし穴が開いているリスクは存在します。

特に社長が苦手な分野を部下に任せきりにしている場合には、第三者からみればそこに潜在的な危険が潜んでいる可能性があると受け止めます。

つまりM&A売却検討を、自社を写す「鏡」の役割として利用するべきなのです。

今回はここまで! 次回もM&Aコラム応用編【M&Aの疑問にお答えします】お楽しみに!

(提供:Biglife 21)

尾星獅(あきお・せいじ)…1961年生まれ。55歳。独立系経営コンサルタント会社に在籍後、1991年仲間と現在の会社前身である経営・マーケティングコンサルティング会社を起業。2000年からIPO(株式上場)支援コンサルティング。2004年からM&A支援コンサルティング業務をそれぞれ本格稼働させる。2007年には社名を株式会社IPO・M&Aコンサルタントグループに変更。現任IMグループ取締役会長。

 

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