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女性の挑戦機会を増やし、日本の課題を解決する!

【連載 経営トップの挑戦】 第20回〔株〕LiB 代表取締役 松本洋介

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(写真=The 21 online/松本洋介(LiB代表))

代々商いを営む一家に生まれた松本洋介氏は、幼い頃から「一刻も早く自立したい。貧乏しても苦労してもいいから、自分で自分の人生のハンドルを握りたい」という思いを強く抱いていたという。そんな松本氏が創業事業に選んだのは、日本初のキャリア女性に特化した転職サービス、「LiBzCAREER(リブズキャリア)」。2014年4月の創業から3年目の今、登録者数は8万3000名を突破。今、世間では働き方改革や女性活用が盛んに叫ばれているが、「3年目にして、やっと本当にやりたいことができるようになってきた」という松本氏の目には、どんな働き方の未来が映っているのだろうか。

数ある転職支援サイトの中で一体どこが日本初なのか?

――他の転職支援サービスでも女性用を銘打ったものは目にしますが、「LiBzCAREER」はどのような点で日本初なのでしょうか?

松本「LiBzCAREER」は、日本初の即戦力キャリア女性「限定」の転職マッチングプラットフォームです。自分に合った仕事を探す女性と、女性の力を求めている企業が出合うお手伝いをしています。

一般的な転職支援サービスは、「男女両方募集していますよ」というかたちでありながら、実は男性の転職をベースに考えられたサービス設計になっていて、その中に一部女性コーナーがある、というのが率直な印象です。実際、そのようなサービスにおける募集では蓋を開けてみると男性ばかりが求められていたり、女性からすると「本当に企業側が女性を求めているのかどうかわからない」「女性が働きやすい企業なのかわからない」といった不安の声をお聞きすることも多くありました。さらに、大手の転職サイトなどでは正社員雇用が中心である点も、男性メインのサービスと思える原因です。女性の場合、男性よりもキャリアとライフステージが密接に関わり合うため、正社員雇用ばかりが希望されるわけではないのです。

そんな不安を解消することから始まって、女性だけのことを考えたサービスを作ろうとすれば、当然、普通の転職支援サービスとはまったく違ったものになります。でも、世の中には、女性のためだけの転職支援サービスがありませんでした。

――それで、日本初となる「ゼロベースで女性のためだけに作られた」転職支援プラットフォームを作られたのですね。

松本 結果、創業以来3年間で8万3000人の女性に登録いただくことができました。企業のほうは、LiBzCAREERに登録いただいているということはすなわち「女性に活躍してほしい」と明言している企業ですから、前述のような「実は男性が採用されやすい」であるとか、「まったく女性フレンドリーでない企業だった」といった問題を防ぐことができます。

――具体的にはどんなところが、他のサービスと異なるのでしょうか?

松本 LiBzCAREERでは、女性が自分で企業を探せるのはもちろん、転職を支援するキャリアコンサルタントも選ぶことができる、という特徴があります。ユーザーはコンサルタントの顔写真や実績の他に、女性支援への思いなども知ることができます。それを見て、「この人に相談してみたい」という人を選べるわけです。

行きたい企業を自分で選択し、アプローチできる人はそのまま応募ができますし、誰かに相談しながら進めたいという人は、自分に合いそうなキャリアコンサルタントを選んで相談することができる。とくに女性は、誰に相談するか、という点を大切にされる方も多いので、キャリアコンサルタントを選べるサービスは好評です。

――女性の心情面をよく洞察されたサービスなのですね。

松本 また、ユーザーの履歴書を見て、コンサルタントや企業から「声がかかる」のも特徴です。女性は男性に比べ、「求められるところで働きたい」という気持ちが強い方が多いので、自分の履歴書などを見て声がかかると興味を持っていただけることが多いのです。コンサルタントは毎日、どんな方が登録されているか見ていて、登録してすぐにスカウトが飛んでくる、といったこともあります。

つまりLiBzCAREERというマッチングプラットフォームでは、「ユーザーから企業に応募」「企業からユーザーへ声がけ」「ユーザーからコンサルタントに相談」「コンサルタントからユーザーへ声がけ」と、企業⇔ユーザー、コンサルタント⇔ユーザーという双方向のやりとりが行なわれているのが特徴です。

――出会える仕事もユニークなのでしょうか?

松本 ひと言でいえば、LiBzCAREER最大の特徴は、「多様性求人」です。女性は男性に比べて、ライフステージによってキャリアが左右されやすい。結婚に始まり出産、育児、それから今後、増加するであろう介護。どれも女性だけに関係する出来事ではないものの、現状、こうしたライフイベントがキャリアに影響を及ぼしやすいのは圧倒的に女性です。さらに、たとえば出産ひとつとっても、20代で出産するか40代で出産するか、時期によってそのキャリアプランは大幅に変わります。

人生の様々な局面において、そのときどきにあわせた働き方があってしかるべきだというのが、私たちのミッションの根っこにあります。だからLiBzCAREERでは、時間や場所の制約を受けにくい時短やリモートワークはもちろん、まだまだキャリアを伸ばしたい・成長したいという女性のためのキャリアアップという選択肢も、新しい仕事に挑戦したいというキャリアチェンジの選択肢も、さらには働き方のペースを抑えたい、増やしたいといったモードチェンジの選択肢も、子育てが一段落して再び社会に参加したいというリキャリアの選択肢も、人生のステージに合った働き方を細やかに提案できるようになっているのが特徴です。

究極的には、それぞれの方ごとに異なるライフステージすべてに対し、都度提案できる働き方がある、という状態にするのが理想ですね。

(写真=The 21 online/松本洋介(LiB代表))

 

自分のためだけに24時間使える人は、これからはほとんどいなくなる

――女性の採用に積極的な企業はどうやって見つけているのですか?

松本 企業へはこちらから「御社は女性を戦力にすることで、さらに成長できるのではないか」という提案をしています。とはいえ今、伸びている企業はどこも女性が活躍していますし、最近は国の旗振りもあってどこも女性の力を求めていますから、企業からお問い合わせをいただくこともあります。人口も減る一方ですし、男性だけが活躍できる会社ではなく、男女が活躍できる組織にしたいというのはみなさん共通です。

ただ、どんな女性が自社で活躍してくれるのか、そこに悩まれる企業は多い。そこで私たちが、「御社のそのお仕事であれば、こんなキャリアの女性が適任ですよ」というご提案をしたり、あるいは「フルタイムの方を探さなくても、時短社員さんで問題なく回せると思いますよ」などとアドバイスをさせていただくこともあります。

――企業の意識も変わってきているのですね。

松本 それはそうですね。というか、そうでないと困ってしまいます。だって、高度経済成長期そのままの、「残業、転勤、終身雇用、なんでもござれ」という、まるで戦士のような働き方のできる人じゃないとレギュラーでいられないなんて言っていたら、どうなるでしょうか?今、日本が抱えている問題は、人口減少だけではありません。介護問題もあります。僕も今、介護ではありませんが闘病中の父にできる限り会おうとしばしば帰郷していますが、場所が離れているので時間もエネルギーもかかります。

自分のことだけに24時間使える人なんて、これからはほとんどいなくなるでしょう。保育園に入れられない子育て中のお母さんはもちろん、介護離職だってどんどん増えてくるはずです。脂ののった40代、50代が会社を辞めれば、企業のダメージは避けられません。

――家族などのために時間を割くことを、いまだになんとなく言いにくい会社も多そうです。

松本 「誰かのために時間を使いたい人」でも社会に参加できるようにしないと、日本が必要とする労働力はとてもまかないきれません。今は人生100年時代ともいわれていて、80代、90代まで働く社会が近づいてきています。労働力が必要な国だけでなく、個人にとっても、多様な働き方で社会に参加できることが豊かな人生に直結します。

だから、「働き方のフォーマット」を増やしていく必要があるのです。そういう意味では、女性だけではなく男性にも、多様な働き方の提供があってしかるべきだと考えています。時短、リモート、副業など、さまざまな「働き方のフォーマット」が増えれば、もっともっと活躍できる人が増えます。働く人の総数を増やすことができるのです。

日本の課題のほとんどは、人口構成と労働力のゆがみから生まれている

――では、なぜユーザーを女性に絞ったのでしょうか?

松本 私、学生時代にバックパッカーをしていたんです。その時、これは「バックパッカーあるある」なんですが(笑)、自分が日本人であることを強く意識すると同時に、日本のいいところが次々に見えてきました。世界中どこに行っても日本が一番安全で、一番ご飯が美味しくて、街もきれいで。やっぱり日本ていいよな、って素直に、強烈に感じました。その時、自分が起業する際には、いつかは世界で勝負してみたいなんてことも思いつつ、まずは自分が生まれ育った日本が停滞していて未来が見えないのをなんとかしたいと、そう思ったのです。それはすごく素直な気持ちでした。

それで、自分の生まれ故郷である日本に貢献できる事業を考えた時、日本の諸問題はほとんどが人口構成のゆがみからきている、ということに思い至ったのです。不景気も、年金問題も、社会保障費問題も、結局は労働力が減っていき、お金を使う人も少ないのが原因です。そりゃあ右肩下がるよな、という話ですよね。人口構成、労働力のゆがみを是正しないといけない。

――そこで、松本さんが出した答えが女性の活躍だった、と。

松本 はい。人口構成のゆがみ、労働力の不足に対して、じゃあ移民を受け入れるのか、いやAIだ、とそれぞれの解決プランがあるわけですが、僕は女性の活躍だと思いました。なぜなら人口の半分が女性ですし、なんといっても日本の女性の教育水準は世界トップクラス。だから、20代の女性は活躍していますよね。企業も優秀な女性の存在をよくよく知っているわけです。ただ、働き方のフォーマットが少ないから、結婚や出産を機にレールから外れてそのまま戻れないような状態になってしまう。この問題を解決すれば、インパクトは大きいと確信しました。

レベルが高く、人数も多い層が、働きたくても働けない状態でくすぶっている。これは何よりも先に取り組むべき問題だと考えました。だから起業する時には、女性の働き方にまつわる環境整備が喫緊の課題だと明確に考えていたのです。

女性の労働環境にまつわる問題を解決できれば、すなわち働き方のフォーマットを増やすことができれば、女性は安心して子どもを生んだり子育てをしたりできるようになり、それはつまり男性にとっても働きやすい社会ということにもなります。

女性に囲まれて働き、驚いたこと

――問題に対して、この手で解決しなければという意識が非常に高い松本さんですが、起業自体は昔からしようと思われていたのでしょうか。

松本 起業することは子どもの頃から決めていた、と言えると思います。私の家は、代々商いをしていたんですね。景気がよければおかずが一品多いみたいな(笑)。だから、生きていくことは働くこと、という実感が染みついていました。それで、「僕も早く自立したい、自分で自分の人生のハンドルをにぎりたい!」と、幼少期からずっと思っていたんです。貧乏でも苦労してもいいから、って。だから大学は全部自分でお金を用意して行きました。在学中も自立したい気持ちがとにかく強く、生活費諸々お金も必要だということで、仲間と起業したのです。

――学生起業されていたのですね。上手くいきましたか。

松本 ええ。お金稼ぎという意味では、ビジネスはとてもうまくいきました。がむしゃらに働いてお金が稼げるのは面白かったです。でも、当然ながら学生ベンチャーの域を出なかった。今、思えば当たり前すぎて笑ってしまうのですが、本屋に行って本田宗一郎氏の本を読んだりして、そのあまりの差に悩み始めたんですね。何が違うって、本屋に本が並ぶような経営者たちの会社は、きちんと社会貢献していて、社会に利益を与えつつ自分の会社の社員にも貢献している。では自分はどうか。ひたすら毎日働いて、お金は入ってくるけれど、でも「あれ?自分はこんなことがしたかったんだっけ?」という疑問が頭をもたげて、離れなくなった。

その結果、ちゃんと会社というものを、事業というものを学びたいと思って、一度会社に就職することに決めました。入社の動機はひとつだけ、「盗みたい会社に入る」ということでした。それで選んだのがリクルートだったのですが、ここで私は女性に囲まれて働くことになったのです。

――女性と働いて気づいたことがあったのでしょうか。

松本 リクルートで最初に携わった『ホットペッパー』の事業は8割が女性メンバーでしたし、その後、女性向けのファッション通販サイトも担当しました。まずここで、女性向けのビジネスって面白い、と思ったのです。男性はあまりモノも買わず、ファッション誌もバラエティが少ないですが、女性向けは商品でも雑誌でも、とにかくバラエティに富んでいる。こちらが提案すれば、打てば響くように反応が返ってくる。その感性の豊かさを知って、女性をターゲットしたビジネスは面白いなと思いました。

次に、役員、COOとして入ったトレンダーズも女性だらけでした。ここで痛感したのは、働く女性たちというのはこんなに悩んでいる、もっと正確に言えば「モヤモヤしている」のか、ということです。非常に驚きました。女性は男性に比べて、まだ見ぬ未来について悩んでいることがとても多いですね。今現在、彼氏がいなくても、結婚や出産を想定し、仕事と天秤にかけて、心配していたり。このままバリバリ働いていて、自分は幸せなのだろうかと考えていたり。男性からすると驚きでもありましたが、同時に「そりゃそうだよな」とも思ったんです。

女性はライフイベントやその時期によって男性以上に人生が大きく変わります。そして実際、私の周りでは、ライフイベントにともなって仕事を休んだり諦めたりする女性がいました。それを見て、いつも、もったいないなぁと思っていました。

このような経緯があり、いざ起業しようと思った時、「女性の働き方を創業事業にしよう」というのは、自然に点と点がつながるように決まったのです。

(写真=The 21 online/松本洋介(LiB代表))

 

いい仲間が集まることは、スタートする前から見えていた

――男性の松本さんが中心となって女性の働き方に切り込む難しさはありませんでしたか?

松本 実は私は、この問題を解決するには男性が主導することが必要だと考えています。ここからは誤解がないようにと思いつつ率直にお話ししますが、このテーマを女性がやろうと思っても、正直なかなか難しいと思うんです。戦士のように働ける、すなわち主に男性だけが手にしていた「働く」という既得権益。そういうものがあって、これを女性が「私たちにもください」と言うだけだと、既得権者である男性からすれば拒否反応が起きると思いました。

でもこれは、男女が手を取り合わないと絶対に前に進まない問題です。だから私は、男性が手を挙げることも必要だと考えたのです。

男性が手を挙げるべきと思った理由はもうひとつあり、それは女性が主導したら「大きなトレンドにはなりにくい」と考えたためです。トレンダーズ時代、当時行なわれていた起業志望女性のサポートで、2000人の起業を志す女性に会い続けて思ったことがありました。それは、女性の起業は男性の起業に比べて「フリーランスと近い感覚である」ということです。

もちろん例外はありますが、多くの場合、女性が起業するというと、それは好きなことを、好きな仲間で、好きなペースでやりたいという思考であって、拡大させることへのこだわりなどは低い。だからメンバーもせいぜい2、3人というケースが多い。それはそれでいいのですが、個人サービスになっても事業にはなりにくいだろうというのが正直な印象だったのです。

――なるほど。女性に囲まれて働き、女性向けのサービスを作ってきた松本さんならではの、現実的な視点だと思います。

松本 実際、今、私がやっているようなテーマに取り組もうとした女性は山ほどいました。その人たちはやっぱりリクルートなりで働いて、「同じ悩みを抱えている女性を助けたい」という思いで起業し、コンサルタントなどをされています。もちろんその仕事自体は尊いのですが、個人サービスの域を出ていないと考えます。

しかし、ライフステージに合わせていきいきと働ける女性を増やすことは、私にとっては、日本を変えるテーマです。今となっては国を挙げたプロジェクトでもあります。その時に、個人サービスが束になっても、圧倒的に足りないんです。一方で、国がやれと言っても、なかなか進むものではない。だから民間からがんがん突き上げて、存在感を示せる規模になることが必須。そうして国と民間が手をとりあって伴走して、やっと実現できるテーマであると思っています。

だから私たちは、国や腰が重い大企業すら一目置くような存在にならないといけない。そう考えると、リクルートで事業を学びトレンダーズを上場させ、仲間を集めお金を集め事業をつくり拡大してくことを得意とする自分がやるのは相性がいい。それに今までの経緯で、このミッションを掲げて声がけすれば、思いをともにする女性(男性もですが)がたくさんいることはわかっていました。強い組織ができるとわかっていたのです。

社員の中に他社の社長が!?働き方の変化は始まっている

――御社自体も多様な働き方の社員さんがいるそうですが?

松本 最も特徴的であり、当社が先進的に行なったことといえば、「メンバーシップオプション」制度ですね。簡単にいえば、複業OKの働き方です。わかりやすい複業・兼業はもちろん、他社で社長をやっている人が、うちで社員をやっているなんていうこともあります。創業当時からやっていて、当初はテレビなどからたくさん取材も受けましたが、今は他社でも取り組まれるようになりましたね。

働くママはもちろん、自分で起業しながらうちで働いてくれている人もいます。週3、4回は当社の仕事をし、週1、2回は自分の会社のことをする。高いモラルが求められますが、そこは性善説でやっています。外でも求められる人はうちでも高いパフォーマンスを発揮するはずだ、というわけです。もちろん、当社で学んだことを自社あるいは他社で生かしていることもあるでしょう。

――御社とそれ以外にかける時間のバランスは人それぞれなのでしょうか。

松本 それぞれですね。当社8、外部2の人もいれば、当社2、外部8の人もいます。8:2が2:8に変わる人もいますし、逆になる人もいます。また、最初は外部9だったのが100%当社の社員になる人もいれば、逆に当社から卒業していく人もいます。これが、いいんです。こういう間口の広さがないと、自分の会社を経営していたり、外でも求められるような人材が、そもそも来てくれませんから。

このような取り組みの結果、おかげさまで、当社のサービスのみならず、マネジメントスタイルに対しての賞も複数いただいています。2017年度「働きがいのある会社」女性ランキング(Great Place to WorkR Institute Japan)では、従業員100人未満の部門では1位をいただくことができました。

――そうした雇用を怖がる経営者もいると思いますが、信頼関係はどのように?

松本 当然、ルール整備やコミュニケーションの設計等、細かいことはたくさんあります。ですが、一番は、「もう、凝り固まった既成概念にとらわれている時代じゃないですよ」ということですね。たとえば会社のメンバー同士の信頼関係構築について、毎朝満員電車に乗ってやって来て、定時まで机に座っている人が信頼でき、そうでない人は信頼できないかといえば、そんなことはありません。

ペイフォータイムの時代は終わり、ペイフォーパフォーマンスの時代です。ある仕事を朝から定時まで7日間かけてやる人より、週1回来て同じパフォーマンス出してくれる人のほうがありがたいのは、火を見るより明らかです。ビジネスは複雑化し、企業の寿命が縮まっている。どんな人が本当に必要で、ありがたいのか、経営者は凝り固まった既成概念を打ち捨てて、考えてみるべきだと思います。

――最後に、今後の展望をお聞かせください。

松本 信用ゼロ、知名度ゼロ、すべてゼロから始めた会社で、かつテーマが難しい。私たちの起業は、完全なるゼロからのスタートでした。多くの企業が、「結婚して子どもを産んで辞めるかもしれない女性」と「戦士のように働きそうな男性」が目の前にいたら、後者を選んでしまいがちな世の中。

そこへ切り込もうとすれば、いきなりわがままは言えません。いくら「こうしたらいいですよ」「それが御社のためにも日本のためにもなりますよ」なんて言っても、聞いてもらえるはずがない。

だから、まずは企業が欲しがる人を紹介して実績を作りました。私たちにしかできないマッチングを実現するはずが、企業の求めることをしないといけませんでした。でも、そうして信頼関係を築き、実績を出し、3年が経ってようやく、「実はご提案なのですが」と言って、新しい人材や働き方のフォーマットを提案できるようになりました。やっと、やりたいことができるようになったのです。

私たちの使命は、女性が人生のシーンに合わせて快適に、力を発揮できる世の中にすることです。これからも、ステージに合わせて多様な雇用形態を得られるサービスを充実させていきたいと思います。挑戦の敷居を下げ、どんどん挑戦していただける環境をつくっていきたいです。

国を変えるムーブメントとなるか?

創業以来、順調に成長しながらも「起業から3年間は臥薪嘗胆だった。本当にこれからです」と語った松本氏。何事も率直に誠実にお話しくださる姿勢が印象的だったが、一番驚いたのはその洞察力だった。たとえば転職について、「女性は実行するかしないかにかかわらず、常に情報収集しているイメージ。一方の男性は、火が付いたら早いけれど、それまでは情報収集すらしない」。これは、周りを見渡してもうなるほど的を射ているように思う。

また、現存する転職サービスが「ジョブチェンジ用」で、一回利用したらそれでおしまい、という「男性向け」なサービスであるのに対し、女性は「何かあったらいつものあの人、あの会社に相談しよう」というサービスを好む。だからLiBzCAREERは「1人の女性が生涯を通じて利用できるサービスになりたい」、という理想図にも説得力がある。

松本氏の目には、女性を起点としてすべての人が、自分の人生の「その時」に合った働き方をしている世の中が映っている。「国が、大企業が、無視できないほどの存在になる」と明言する社長と、志を同じくするメンバーの挑戦が、日本を変える日に期待したい。

松本洋介(まつもと・ようすけ)〔株〕LiB 代表取締役
明治大学卒業後、2003年に株式会社リクルート入社。タウンワーク、ホットペッパーでは全国営業MVPとして受賞歴多数。新規事業開発室にてエルーカ創刊に携わった後、2007年4月「東証マザーズへの上場実現」をミッションとしてトレンダーズ株式会社にCOOとして入社。2010年6月より取締役就任。2012年10月営業取締役としてミッションであった東証マザーズへの上場を実現。2014年3月の退任時には、入社当時2億強だった売上を約20億まで牽引。2014年4月1日株式会社LiB創業、代表取締役就任。(写真撮影:山口結子)(『The 21 online』2017年05月25日公開)

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