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日本企業の生産性の悪さは、なまじ頭が良いエリートが多いからだ

「そう、ずっと遅れてるのよ。年度末にまとめる予定になっているんだけど、3カ月経っても、予定の5分の1もできていないのよ……」

そう話すと、冷めかけたコーヒーに目を落とし、「ふ〜」とも「はぁ〜」ともつかない言葉でため息を漏らした。

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(写真=Thinkstock/GettyImages)

彼女は、新興のLCCの整備部門の課長だ。前職は大手航空会社のグランドスタッフとして、カウンターサービスなどを担当してきた。仕事の限界を感じていたところに募集がかかったのがそのLCCの整備部門。

彼女には工学系のバックグラウンドはないが、「ダメもと」で応募したところ「なぜだかわからないけど」(本人の弁)、合格。めでたく整備部門への配属となったという。ただ整備の現場で実作業ができるわけでもない。与えられたのが整備マニュアルの整備。機体整備は航空会社のまさに生命線。その整備方法や手順が間違えば即事故につながる。

そのLCCは大きな事故は起こしていないものの、国交省から度々調査や指導を受けるなどトラブルが続いていた。そこで改めて整備マニュアルを作り直すプロジェクトが立ち上がった。しかるべき経験を持つ人が集められ、彼女はそこにサポート要員として採用されたようだ。

しかしプロジェクトは一向に進まない。

聞けば、実際にマニュアルを見直している担当者が、それぞれ出身母体が違う人たちで、用語1つ1つに対して

「我が社(大手航空会社A)ではこうだった」
「いや、私の出身ガイシャ(大手航空会社B)ではこう定義していた」
「いやいや当社では(外資系運輸会社)こういう解釈もしていた」

と用語の解釈定義づけを巡って、細かいぶつかり合いが続いているのだという。

プロジェクトチームには、元国交省の技官などもいて国の方針や条例などの基本案をつくった人もいるから、なおさら紛糾する。「俺がルールブックだ」と言い放ったかどうかは知らないが……。

言葉の定義や解釈は重要だ。とくに理工系の業務ではしっかり定義共有されなければならない。ただ聞いていると明らかに時間の無駄遣いをしているとしか思えないやり取りもある。たとえば「おこなう」を「行う」とするか「行なう」とするか、「あらわす」を「表す」か「表わす」にするのか、とかだ。「んなこと、どっちでもいいじゃん」と一般の人は思うかもしれないが、ここは出版に関わる人間としては言っておきたい。

「大事だ」

新聞や一般書籍(小説を除く)の用語表記についてはルールがあって、「ここでは『おこなう』を『行なう』という書き方で統一する」ということを決めている。新聞社などでは「記者ハンドブック」、出版社では「用字用語辞典」が準拠元になる。

問題なのは、一般企業が「じゃあ、ウチでもそういうルールをしっかり決めよう」と取り組むことだ。

言っていることが矛盾するが、文章の目的は、相手に間違いなく情報を伝えることだ。だから「行なう」が「行う」かどうかは「どうでもいい」。

そこはすでに新聞社や出版社が使っている「記者ハンドブック」や「用字用語辞典」に準拠すればいいのであって、何も自社で一からつくる必要はない

彼女の口ぶりから拝察すると、そのどうでもいいことにエネルギーを使って本来の正しい整備のあり方に割く時間がどんどんなくなってしまっているようなのだ。いったいそのお歴々は時給いくらかを考えたことがあるのだろうか。元大手航空会社の整備本部長とか国交省の技官ともなれば、LCCとはいえかなりの給料が出るはずだ。

実はこうした問題は結構世の中の企業では起きている。彼らは「大会社にいた賢いエリート」というだけで、新しい現場を仕切りたがるので、本来業務とは違うところにエネルギーが使われがちとなる

こうした賢いエリートたちは往々にして「万能感」を持っていたりするから、世の中を「知っているつもり」となり、出版社が表記を「用字用語辞典」で統一しているなど露にも思わない。で、余計な鍔迫り合いとか忖度することにエネルギーを使う。

日本企業の生産性が低いのはいまに始まったことではないが、このエリートたちの万能感とか忖度が払拭されない限り、日本企業の生産性は上がっていかない

そりゃあ、ため息も出るさ。

イマドキのビジネスはだいたいそんな感じだ。

(提供:Biglife 21)

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