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全員が定時で帰って結果を出す組織の秘密とは?岩崎裕美子(ランクアップ代表取締役)

こまめな「残業メンテナンス」で、徹底的な時短を実現!

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(写真=The 21 online)

 

夕方5時になると誰もいなくなる会社「ランクアップ」。子育て中の女性社員も多数活躍し、業績は10年連続右肩上がりで成長中。かつてブラック企業に勤務していたという岩崎裕美子社長は、いかにして残業ゼロの会社を作ったのか。そこには"のっぴきならない事情"があったという。

95%が女性社員!時短は「不可避」だった

17時になると社員が一斉に退社する「5時ピタ」文化。それでも売上げは10年間右肩上がりの会社として知られる、化粧品通販「ランクアップ」。ただ、社長の岩崎裕美子氏は、最初から残業ゼロを目指したわけではなかった。社員の95%が女性で、岩崎氏を含む約半数が働くママ。そんな同社独自の事情から、残業を〝撲滅せざるを得なかった〟のが実情だという。

「私は以前、〝超ブラック〟な広告代理店の取締役でした。私自身、仕事が大好きでしたし、同業他社に負けないよう、社員を夜中まで働かせていました。売上げは伸びましたが、女性が多かった職場の離職率は100%。有能な社員も、結婚や出産で長時間働けなくなれば居場所がなくなる、そんな会社に見切りをつけて辞めていきました。

私は当時、35歳で独身でしたが、将来結婚や出産をすれば戦力外通告されるのは自分も同じ。だったら『女性が一生活躍できる会社を作ろう』と思い、立ち上げたのが、『ランクアップ』です」

創業当初は、多少の残業は容認していた。しかし岩崎氏自身の出産を機に、残業ゼロを徹底するようになったという。

「19時に会社を出れば十分早いと思っていましたが、育児をしてみて、これは大変だと。保育園の送迎などの時間的制限や、子供の急な発熱などの突発事項を抱えながらの仕事は、生半可ではありません。社員が安心して出産し、働き続けるためには、定時に帰れる会社にするしかないと決めました。そうでないと、女性が95%の当社では社員が辞めてしまいます。社員が辞めれば会社は成り立たず、私の創業時の想いも叶いません」

「仕事の棚卸し」と「6つの社内ルール」

当初は、残業ゼロに反対する声も多かった。子供がいない社員も多く、何より仕事の量が多すぎて定時に帰れるはずがないというのだ。そこで実施したのが、仕事の棚卸しである。

「どの仕事にどれだけ時間をかけているかを一覧にしてみると、ムダは一目瞭然でした。たとえば、週に1度の会議の資料作成に、週8時間もかけていたことがわかりました。最初は作成時間の短縮も考えましたが、思い切って会議自体を月2回に削減。『やったほうがいい』というレベルの仕事は思い切ってやめる。やめて不都合があれば、戻せばいいのです。棚卸しは年に2回、定期的に行なっています」

また、自分たちよりも専門家に任せたほうがいい仕事は、どんどんアウトソーシングした。これも、残業ゼロを達成できた大きな要因だった。

「私たちは、採用活動、ホームページ作成、コールセンター、配送業務など、多くの仕事をアウトソーシングしています。餅は餅屋、プロに任せるほうが精度が上がり、効率的です」

アウトソーシングを成功させるコツは、理念の共有だという。

「やみくもに外注しているわけではありません。パートナー企業には、私たちの企業理念や考え方を最初に伝えます。目的を共有すれば大きな仕事も任せられますし、そのうえでパートナー企業同士をつなげれば、より高次の効率アップも可能です。たとえば、コールセンターと配送会社を引き合わせ、配送トラブルが起きた場合は私たちを介さずやり取りし、迅速に解決してもらっています。

すべては信頼関係があるからこそできることです。以前の広告代理店時代は、お金がもったいないからとなんでも内製化していました。ただその結果、深夜残業の日常化、女性社員の離職が続いた経験があるので、今ではパートナーとの仕事の共有は欠かせません」

業務スピードを上げる「6つの社内ルール」も制定した。

◆ランクアップの≪ムダをなくす6つの社内ルール≫

①社内資料は作りこまない
②会議は30分
③メールで「お疲れ様です」は使わない
④社内のスケジュールは勝手に入れる
(スケジューラーに空きがあれば、相手が社長でも勝手にアポ入れ可能)
⑤プロジェクト化
(仕事はプロジェクト化し、少人数で回す)
⑥社内の根回し
(仕事の質アップと問題の早期発見のため、企画の初期段階から他部署の意見を募る)

「『会議は30分』は、社員からの提案です。昔は会議に2時間かけ、結論が出たと思ったら翌日に変更、なんていうこともしばしば。これには私も社員も疲弊しましたね。今はどんな会議も30分と決めているので、速やかに結論が出ます。結局、30分で決まらないことは、2時間かけても決まらないのです。

『社内メールに〝お疲れ様〟と書かない』も社員の提案。取引先に対しては別ですが、社内では挨拶なしでいきなり用件を書きます。また、社員間は『さん』づけです。新入社員などは人の役職を確認するだけで大変で、それこそ時間のムダです。

社員の意見も取り入れながら職場の環境改善を進めることで、社員のモチベーションも上がっていきました」

残業ランキングの公表を続ける理由

同社では、毎月の全社員の残業時間をランキングしている。基本的に残業している社員自体が少ないが、それでも毎月行なうのは、「二度と長時間労働の会社に戻らない」という決意の表われでもある。

「残業の理由は必ず確認します。イベントなど、突発的でやむを得ない理由もあります。しかし、残業が慢性的に続く場合は、都度、仕事の棚卸しをして整理。少しでも忙しいとき、『1時間くらいいいかな』と残業する社員が増えれば、残業を容認する空気が生まれます。そうなったら最後、残業文化は瞬く間に広がります。だから、今は残業ゼロでも、安心はできません。

なお、当社では新人については残業を許可しています。仕事を覚えるには一定の時間がかかるため、成長のために許可しているのです。それでも、20時には誰もいませんが(笑)」

「これからは男性にとっても、残業ゼロは目指すべき価値がある」と岩崎氏。

「共働き家庭が増える中、奥さんが出産・育児で大変な時期にご主人が協力してあげられなければ、家族は幸せになれません。働く人が仕事も家庭も幸せであるために、男性も早く帰れる社会になってほしいと思います。

どんなことも、背に腹は代えられない状況になれば達成できるもの。残業ゼロも、本当に必要だと思えば、実現に向けてやれることは多々あるはずです」

(写真=The 21 online)

岩崎裕美子(いわさき・ゆみこ)[株]ランクアップ代表取締役
1968年、北海道生まれ。短大卒業後、大手旅行代理店勤務を経て、広告ベンチャーの取締役営業本部長に就任。2005年、ランクアップ設立。ヒット商品「ホットクレンジングゲル」は累計販売数750万本を超え、現在社員数51名で約85億円を売り上げる。2013年には東京都の「東京ワーク・ライフ・バランス認定企業」の育児・介護休業制度充実部門に、通信販売業界で初めて選ばれた。著書に『ほとんどの社員が17時に帰る10年連続右肩上がりの会社』(クロスメディア・パブリッシング)がある。《取材・構成=前田はるみ、写真撮影=まるやゆういち》(『The 21 online』2017年8月号より)

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