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「帰れない職場」の原因はここにあった! 沢渡あまね(業務改善・オフィスコミュニケーション改善士)

ムダをなくし、生産性を上げる働き方のコツとは?

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(イラスト=The 21 online:タカハラユウスケ)

 

「帰れない職場」には、業務と業務の間に見えないムダが溜め込まれていることが多い。これを発見し、取り除く方法とは? 効率化のみならず「やりがい向上」まで実現できる改革ノウハウを、新刊『「自分」の生産性をあげる働き方』を上梓した、業務改善・オフィスコミュニケーション改善士の沢渡あまね氏にうかがった。

「言える化」「見える化」でムダの洗い出しを

長時間労働が社会問題になり、「働き方改革」が声高に掲げられる中、多くの企業は残業を減らす必要に迫られています。しかし、そこでとられている方策は、目先のことの改善しか考えられていないものが多いように感じます。

たとえば、退社時間を決めるなどの「制度化」。しかし実際には、仕事を持ち帰る社員が増えただけ、となるケースも少なくありません。

研修などによる「スキル強化」で作業の高速化を図る方法もありますが、これにも限界があります。スキルはあくまで属人的なもの。そのノウハウを共有しておかないと、その人がいなくなってしまった瞬間、また元に戻ってしまいかねません。

必要なのは、さらに根本的な改革。つまり「プロセスの見直し」により、ムダな業務を洗い出して削ること。

それには、まずは検討の「場」を作ることが重要。部門を超えて話し合えるミーティングの場を随時設けるべきです。

ここでのポイントは「見える化」と「言える化」です。見える化とは、ムダの発見と共通理解。そして「言える化」とは、各社員が「これはムダ」と言える雰囲気を作ることです。

言えない原因は、主に社員がムダに気づいていないか、もしくは「批判だと思われそう」とためらっているかの2つ。これを解決するのは上司の役割です。前者のタイプにはムダ削減について書かれた書籍を読んでもらうなど「気づき」を与えることで、意見が出やすくなります。後者のタイプが多いようなら、「言う場」を設ける。あるいは、外部のファシリテーターに任せて上司は席を外すのも一考です。

ムダを単なる個人の不平不満に終わらせない。チームでコミュニケーションを取り共有化する。「やっぱりこれってムダだよね」「おかしいよね」などと合意形成する。これこそが、ムダ削減の基盤になります。

では、職場のムダをどのように改善するか解説していきましょう。

「職場のムダ」はどうやって改善する?

ムダ① その会議、本当に必要?

毎週月曜日、定例になっている会議。前週の振り返りと今週の目標をチーム内で話し合うのだが、毎週同じ話ばかり。そもそも前週の成果報告は書面でしているのに会議は必要?

解決法:会議の目的と人の絞り込みを

「ムダな会議を減らす」と、「会議のムダを減らす」。この2つのアプローチが必要です。

ムダな会議を減らすには、まず会議の「目的」を明確にしましょう。何かを決めるためか、アイデア出しか、単なる報告会か。報告や通達であればメールで十分なはず――というように、会議の時間や回数を絞り込みます。

次に出席者を選定します。その会議の目的を達成するには誰が必要かを考え、慣例的に呼んでいるだけのメンバーは呼ばないと決めましょう。一人当たりの会議の数を絞ることができ、さらに、シンプルな編成になるので「会議のムダをなくす」ことにもつながります。

会議のムダをなくすには2つの方法があります。1つは出席者一人ひとりがムダのない発言を心がけること。それには、最初に結論と要点を明示してから詳細を話すようにします。ただし、意見を言い合うことが命のブレインストーミングを目的とした会議もあります。その場合は、形式にとらわれない自由な雰囲気のほうがアイデアが出やすく効果的。目的に応じた使い分けが大事です。

もう1つは、最後に「決定事項」「宿題事項」「次回予告」を確認する、名づけて「3本締め」。これを行なうかどうかで、参加者の次のアクションが大きく変わってきます。

ムダ② 仕事の進め方が皆バラバラ

教材販売の営業に向かうAさんとBさん。イベントなどのしかけで実績を上げるAさん。一方、Bさんは今日もやみくもに戸別訪問。明らかにムダなのに誰もそれを指摘せず……。

解決法:業務プロセスを共有化する

メンバーが独自のやり方で仕事を進める傾向にある会社は、人によって仕事のスピードが違ったり、目標達成までの時間が読めなかったりと、数々のムダが生じます。さらに各々が感覚的に仕事を進めているため期限を守れなかったり、突然のトラブルによって大混乱が起こる危険もあります。

対策は「業務プロセス」を整えて共有すること。業務ごとに、最短距離でゴールに到達するためのプロセスを設定し、それをメンバーに伝えて統一を図るのです。たとえば、教材販売をする会社の営業ならば、「チラシ投函」「電話アポイント」「訪問」など、「成約」というゴールに至るまでの一つひとつの行動に分解し、道筋を立てます。

こうすることでムダな作業が減るのはもちろん、メンバー間の比較が可能となり、仕事の遅い人が何に時間を取られているかが見えてきます。また、それぞれの業務にかかった時間を記録することで、そのデータをもとに上司が改善を促したり、仕事が速いメンバーのノウハウを他のメンバーと共有させることもできます。

突然の資料作成などの「一時作業」も、かかった時間を記録しておけば、似たケースが発生したときに時間を見積もりやすくなります。記録癖はつけておきたいものです。

ムダ③ 一見スペシャリストだが……

総務部で、長い間働いているCさん。彼女に聞けばなんでもわかるが、いなくなるととたんに業務が止まってしまうし、そもそもやり方がちょっと時代遅れのような気もして……。

解決法:承認欲求を満たしつつ業務の分散を

「あの仕事は彼でないとわからない」「彼女がいないと仕事が止まる」など、「仕事の属人化」の弊害は数知れず。他の人からのチェックが働かないため、スペシャリストに見えて実はムダが多いことも多々あります。

しかし、属人化を完全になくすことはなかなか困難。「私だけができる仕事」と評価を受けることで「承認欲求」が満たされるため、そのノウハウを手放したがらないからです。その牙城を少しでも崩すには、別のかたちで本人の承認欲求を満たすのが有効。指導者役を任せたり、知識の公開を「ありがたいこと」として評価する、といった方法が得策です。

その際、業務ごとの属人度と優先度の高低を判断してから「どの業務から属人化を排除していくか」を決めるといいでしょう。

属人度も優先度も高い業務は真っ先に手をつけるべき。ノウハウの公開を促すか、その仕事の相対的な重要度を下げることが必要です。一方、属人度は高くとも優先度が低いなら、ある程度容認してもOK。

なんでもかんでもマニュアル化、共有化を目指すのではなく、属人化の良し悪しを判断して、まず向き合い方を決めましょう。

ムダ④ 最初に確認しておけば!

上司に頼まれた資料をエクセルで作った部下。完璧に仕上げたと思ったのに、取引先に提出する資料はワード形式でなくてはならなかったため、再度作り直すはめに……。

解決法:タイミングを決めて報連相を

上司に頼まれて作った資料を見せたら、全然違うと突き返され、最初からやり直すことに……会社でよく見られる光景です。

これは、上司と部下の認識のズレに加え、資料を最初から完璧に仕上げようという心理が働いています。

まずは、その仕事の①「目的」は何か、②必要な資料などの「インプット」に何を使うか、③「成果物」のイメージはどのようなものか、④影響を受ける「関係者」は誰と誰か、⑤「進め方」をどうするか。仕事を与える/受ける際、この5要素を双方ですり合わせしておきましょう。

そして部下は、完璧に仕上げてから見せるのではなく、こまめに「報連相」をすること。要所要所で確認を取れば、少々ズレが起こっても手戻りが少なくてすみます。

上司は、最初に進め方を説明するときに「下書きの確認を3日後に」「図版を入れたものを5日後に」などと、報連相する時期も決めておくとよいでしょう。その際、上司が積極的に報連相に時間を割く姿勢を見せることが大事。ただ、頻繁な報連相で上司自身の仕事が寸断されるという場合は、「火曜日の午前中は報連相タイム」など、あらかじめ時間を決めて対応を。

ムダ⑤ 明らかにやる気がゼロ

海外事業のプロとして転職してきたDさんだが、なぜか国内事業部へ。本人は明らかにやる気がゼロ。それはチームにも伝わって、全体的に元気がなくミスやムダも多発している。

解決法:意外と重要な「雑談」の時間

会社組織である以上、本人がやりたい仕事ができるとは限りません。しかし、やりたい仕事や得意な知識や技術を発揮できない状況が長く続くとモチベーションは下がる一方。そんな状態で仕事をしても、スピード、クオリティともに思わしくない結果になりがちです。

モチベーションが上がらなくなる原因は以下の3つ。

1つ目は「不適材不適所」。不得意なことを任され、長所を発揮できず、仕事への愛着を失ってしまいます。

2つ目は「過信」。荷の重すぎる仕事を任せたり、「できるはず」と決め込んで教育も手助けもしない状態。部下は次第に組織への不信感を募らせます。
3つ目は「あいまい&あやふや」。各々の責任範囲や業務の目的が不明瞭なため「私は何を求められているの?」「この仕事、やる意味あるの?」となる状態です。

これらの共通項は「知らない」こと。部下に対する無関心、会社や業務に対する無知――これらを払拭するには「知る」のが一番。「定例会議のうち10分間を雑談時間とする」「週に1回皆で昼食を取る」ことなどで周囲の個性や適性が見えてきて適材適所や的確な指示が可能になり、皆のモチベーションも上がっていくでしょう。

ムダをなくして生産性を上げるプロセスとは?

ムダを見つけるための3つの「出す」

さて、これまでさまざまなムダに対する改善法をお話ししてきましたが、そもそも「職場のムダ」を見つけるために必要なことは何か。それは、3つの「出す」──「書き出す・見出す・ひねり出す」です。

「書き出す」は、たとえば「各自が抱えている仕事や課題を付箋に1件ずつ書き出す」こと。文字にすることで現状を「見える化」できます。

次いで、その付箋を模造紙などに貼って皆で眺めます。書き出したものを眺めてみると、「これムダだよね」「こんな課題もあるかも」などと、ムダや改善点が見えてきます。そして、「ムダ」を「ムダ」だと言いだす人が出てきます(いわば「言える化」ができる)。これが「見出す」段階です。

その際、それぞれの業務を、「すぐやる」「後回しにするか誰かに頼む」「明日やる」「やらなくていい」と、重要度や緊急度の高低で4つに振り分けましょう。こうして、メンバー全員で、この仕事がどこに当たるのか、その対応はどうするのかを「ひねり出して」いくのです。

同じ要領で、さらに多角的な視点を生むのが「ロールプレイングゲーム(RPG)方式」です。RPGにはよく、敵と対峙した際に「たたかう」「にげる」「ぼうぎょ」「じゅもん」「どうぐ」などの選択肢が出てきますが、これを仕事にそのまま当てはめていきます。

書き出された仕事や課題に対して、「たたかう」(全力で取り組む)のか、「にげる」(やらない)のか、「ぼうぎょ」(保留して様子を見る)なのか?「じゅもん」はさしずめ現代の魔法とも言えるITを駆使した自動化・システム化。「どうぐ」はアウトソーシング、など仕事や課題との向き合い方をチームで議論して決めましょう。

「たたかう」ばかりでは効率化は不可能

ゲーム感覚でそれぞれの選択肢を検討していくことで、メンバーの発言が活性化されるとともに、どの仕事を優先して、どの仕事は後回しでいいのか、チームで意識を合わせることができます。また、発想が広がり、さまざまな対処法をひねり出すことができます。

この方法は、メンバーの意識を高めることにつながります。日々無数のタスクに追われ、何も考えずにすべて「たたかう」で対処していた、などと気づくきっかけになるからです。多様な選択肢を視野に入れることで、一人ひとりに柔軟な時短の発想が身につくでしょう。

こうして、共通意識を持って皆で話し合い、判断する機会を繰り返していくうちに、「この類のケースにはこう対処する」という全体方針が定まってくるはず。こうすることで、“判断の属人化”によって「担当者によって対応が違う」といったことが起こらず、チームとしてブレのない価値観や姿勢を示すことができます。

この構図も、RPGと非常によく似ています。個性の異なるキャラクターが一つの目的を目指してパーティーを組むことは、さまざまな能力やスキルを持つ社員がチームとして仕事をするのと同じ。お互いが足りないところを補い合ってチームとしての経験値を上げていくことが、生産性を上げるための第一歩となります。

ムダ削減の際、むしろ増やすべきこととは?

さて、このような場を何度も設けるとなると、当然ミーティングが増えます。これは一見ムダ削減に逆行する作業のようですが、こうした機会は増やしてもまったく問題ありません。

ムダ削減というと、「減らす」ことばかりが注目されがちですが、内容を考えずになんでも省くのはナンセンス。とくにコミュニケーションは、むしろ増やすべき要素です。

先述のとおり、ムダを生む原因の多くは「指示不足」「報連相不足」「部下への無知」など、コミュニケーションの不備によるものです。そこを強化することが、結局はムダ削減につながるのです。

チームで共有する問題について一緒に考えることで、メンバー間に安心感と目的意識が生まれます。互いに思いを語ることでストレスが軽減されるうえ、話をする中で各人の適性や得意分野が明確になります。上司はそれらを俯瞰し、適材適所で仕事を配分しましょう。

ポジティブな仕事の「飛躍効果」を活用する

こうして、有意義で“やりがい”を伴うポジティブな仕事を増やし、時間を浪費するうえに“やらされ感”を伴うネガティブな仕事を減らす。この「増やす」と「減らす」の両輪で、生産性は一気に向上します。

人は好きなこと・得意なことをしているときに、通常の3~5倍も生産性がアップする、ともいわれています。本当の働き方改革とは、ポジティブな仕事を増やして、ネガティブな仕事を減らす取り組みであるべきなのです。

一方で、本人が好きで行なっている仕事が、客観的に見るとムダ、というパターンもあります。その際、上司は「それはムダだ」とストレートに指摘してはいけません。

人が特定の仕事にしがみつく理由は2つ。その仕事を愛しているか、その仕事を通してでなければ自分の価値を出せない、と思っているからです。それを否定してしまうと、相手のやりがいを根こそぎ取り上げることになってしまいます。

ここでの解決策は、「その人らしさ」に着目することです。本人の個性や適性を観察し、その性質を別の仕事──チームにとって意味があり、かつ本人の成長にもつながるようなワンランク上の仕事に活かせないか、考えてみましょう。

そのうえで、「君は○○が得意だから、これを任せたい」と、次のステップを用意。そうすればモチベーションを維持したまま現行の仕事を手放し、新たな仕事に移行できるはず。

その際、新たな仕事がチームにどう貢献するかを明確に示すことも不可欠です。別の仕事を任せることは、未来を示すことによって本人のやりがいを増やし、生産性を上げるチャンスでもあるのです。

この、個人の「らしさ」と「やりがい」に注目することが、生産性の向上のためには必要不可欠となってくるのです。

沢渡あまね(さわたり・あまね)業務改善・オフィスコミュニケーション改善士/あまねキャリア工房代表
1975年、神奈川県生まれ。早稲田大学卒業後、日産自動車、NTTデータなどを経て、2014 年にあまねキャリア工房を設立。複数の企業で「働き方見直しプロジェクト」などのアドバイザーとして活躍。ITpro(日経BP 社)にて、「ドラクエが教えてくれたチームマネジメント」を連載中。『職場の問題地図』(技術評論社)など著書多数。新刊『職場の問題かるた~“言える化”してモヤモヤ解決!』(技術評論社)が9月に発売予定。(取材・構成:林加愛 イラスト:タカハラユウスケ)(『The 21 online』2017年8月号より)

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