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倒産が頭をよぎるとき、社長が知っておくべきポイント12

資金繰りが厳しい。これ以上商売を続けても傷口を広げるだけ……。従業員の雇用や取引先への迷惑を考え必死に頑張ってきたが、万策尽きてしまった。そんなときに経営者は何をすればよいのか?

倒産件数一万件下回るなかで

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(写真=Thinkstock/GettyImages)

 

2014年は倒産件数が24年ぶりに一万件を下回った(9731件・東京商工リサーチ調べ)。数字だけ見ると日本景気が上向いたようだが、実際は統計上の「倒産」に該当しない隠れ倒産(休廃業)が多い。さらにモラトリアム法終了後も暫定リスケで結論を先延ばしにしているだけの企業も一定数あると思われる。つまりなんとか生き延びているだけのゾンビ企業は今もって結構多い。

本稿では「自己破産」や「事業廃止」「倒産」といった言葉が経営者の頭をよぎった際に知っておくべきポイントを12レクチャーする。

最後の最後まで諦めないで、再建を目指すべく努力してほしい。

①倒産とは何か?

そもそも「倒産」とは何か。一般に倒産というと、すべての資産を換金処分して債権者に分配、その上で事業の廃止という清算型の処理をイメージしがちだ。

しかし実際は事業の存続・再生を目指す再建型の手続きも倒産に含まれる。事業は継続して得られた収益をもとに債務の弁済を行ない、再建を目指していくケースのことだ。

②倒産には2種類の手続きがある

次に倒産の手続きだが、これは裁判所が関与する「法的整理」と、債権者と債務者の当事者間だけで行う「私的整理」と呼ばれる二通りがある。

中小企業が再建を目指す場合は「倒産というレッテルを回避しながら営業基盤を維持でき、従業員の雇用を守る事にもつながるし、関連企業の連鎖倒産を防ぐこともできる」という点でこの私的整理で行うべきと、会社再建を得意とする弁護士宮原一東先生は言う。

③銀行秘密の義務とは?

では、企業に於ける債権者とは主に誰なのか。多くの企業の場合それは金融機関だろう。すなわち企業を再建するとは、金融機関とのリスケ調整が重要なポイントになるということ。

昨今は政府の指導もあり金融機関はリスケに応じやすくなっている。とはいえリスケのお願いをしたら、地場の企業にその情報が伝わってしまうのではないか、こう不安に思う人もいるだろう。

この点、金融機関には銀行秘密の義務がある。決して外部に情報を漏らしてはならないのだ。このため債務整理していることを取引先や顧客に知られることはまずない。風評被害は回避できる。

④債務の個人保証は解除されやすくなっている

また、一般的な中小企業だと経営者個人の債務保証がある場合が多い。倒産=身ぐるみ剥がされるとイメージしがちだが、この点も環境がかなり変わっている。

というのも、2014年2月に『経営者保証に関するガイドライン』なるものが策定された。このガイドラインは、銀行借入に付随する経営者の個人保証の解除を目的としたもの。個人保証の保証解除は昔に比べれば認められやすくなったのだ(これにより個人保証が減少していくのかはわからないが、経営者の心理的負担が軽くなったことは確か)。

⑤法的整理を避けるべき理由

裁判所の関与の下進められる倒産手続き「法的整理」は、極力避けるべきである。企業を精算するのであれば「破産」。再生を考えるのであれば「民事再生」となるのだが、何れにしろ裁判所を関与させるということは、周知の事実になるということ。

当然ながら、「企業が危ない」という悪評がたつ可能性があるし、取引先にも知られることになり、取引継続に支障を来すことになりかねない。

⑥企業再生を検討するタイミングはいつが良いのか

では、企業再生を検討するタイミングはいつが良いのか。当たり前だが、可能な限り早い方が良い。とはいえ経営を中々諦めたがらないのは経営者の性。そこで検討する信号となりえるタイミングをまとめてみた。

・資金ショートや手形不渡りのリスクを事前に把握している時(財務資料の作成を税理士任せにせず、資金繰り表も自社で作るという当たり前のことを行うことで数カ月先を読めるようになる)

・本業の営業利益が出ていない時

・借入過多(過剰債務)の時

・実質債務超過の時 (簿価は違うが、実質的には債務超過と判断される時。例えば、取扱商品の相場が急落。保有不動産の不動産価値が下がる。デリバティブで失敗。連帯保証債務の顕在化など)

⑦誰に相談するべきか

中小企業経営者に利点が多い私的整理だが、債権者との交渉には独特の経験が求められる。私的整理は一歩、間違えてしまえば「借金を返したくないだけなのでは?」と邪推されてしまうので、きちんとしたプロセスに基づいて金融機関に提案する必要がある。そこでノウハウが豊富な専門家に頼むことが一般化している。

それぞれメリット・デメリットを見てみよう。

引用:『社長・税理士・弁護士のための私的再建の手引き』(税務経理協会)

税理士(公認会計士)

メリット
・協力不可欠。私的再建を進める際には様々な税務問題が生じるので税務の専門家の知恵は必要不可欠。

デメリット
・銀行交渉の代理を依頼したくても、法律上は交渉代理までは依頼できない。
・法的手続きを含めた幅広い検討がしにくい。

弁護士

メリット
・倒産局面は紛争のるつぼ。法律に精通した弁護士の存在は大きい。
・私的再建や法的再建など再建手法を多角的に検討できる。

デメリット
・弁護士には専門分野がある。頼んだ弁護士に私的再建処理の経験・ノウハウがないと、法的手続きの申立てを優先しがちな傾向がある。

コンサルタント

メリット
・企業再建に長けた専門家が中にはいる。
・事業の立て直し方を知っている。

デメリット
・銀行交渉の依頼まではできない。
・民事再生などの法的手続きの申し立てを含めた幅広い検討はできない。
・依頼者の会社を食い物とする悪いコンサルタントの存在。

取引先・同業者

メリット
・信頼関係が築けている相手の心強さ。
・スポンサーになってもらう形での支援方法。

デメリット
・業界情報は早く伝わるのが世の常。法的に守秘義務を負っていないので「風評リスク」は生じやすい。
・相手が債権者であれば、「利害対立」の可能性も。

家族・親族

メリット
・一番信頼できる相談相手。
・必要な運転資金を出してくれる場合も。

デメリット
・お金を出してもらったことで口も出される。それが適切な助言とは限らない。
・家族を守ることが最優先され会社再建が後回しとなると、銀行の信頼を損ねかねない。
・家族関係が壊れるリスク。

取引銀行

メリット
・信頼関係を壊さずに済む可能性。
・金融機関の様々な情報やノウハウに基づいたアドバイスが受けられる。

デメリット
・利害対立の可能性。貸し渋りなど債権回収に走られる場合も。流動性の預金のロック。新たな担保設定が求められることも。
・一つの金融機関の言うことだけを聞くと、他の金融機関からの反発が生じることは必至。

公的機関(中小企業再生支援協議会)

メリット
・中立・公正な立場で相談に応じてくれる。
・銀行もその意見に耳を傾けてくれやすい。
・守秘義務もあるので安心して相談できる。
・資金力が乏しければ、各種DD(デューデリジェンス)の費用の一部が補助される点。

デメリット
・債務者の顧問や代理人ではない。必ずしも債務者を守る立場にはない。
・税金が投入されるので再生が困難な案件は相談には乗ってくれても、対応する段階には進んでくれない。

⑧金融機関へのリスケの作法・まずは化粧落とし

金融機関が私的整理の合理性に理解を示し、債権放棄(債務免除)もやむなしと理解してもらう交渉を行なうために、まず多くの経営者がやらなければならないことがある。なにか。化粧を落とすことである。要は、粉飾決算を全て公にする覚悟がまずは求められる。

決算を明らかにした後に、今後の再生計画を製作・発表し、債権者の承認が得られたら実行に移るという手順になる。

もとより金融機関側としても破産されてしまったら何も取り返すことができない。回収できないよりは、きちんと事業再生をしてもらった方が良い。リスケをお願いするのは不安があるだろうが、私的整理は債権者側にもメリットを与えることができることを自信とすべきである。

⑨どういった弁護士に頼むべきなのか?

金融機関にリスケを頼む際は、交渉のプロである弁護士に助言を求めるケースが多い。ところが一口に弁護士と言っても、その人選を間違えると再建させること叶わず倒産まっしぐらとなる場合がある。

気をつけるべきは、思った以上に破産を勧めてくる弁護士が多いこと。きちんと対応してくれない弁護士が多いことだ。会社の顧問弁護士が再建のプロとは限らない。

寧ろ弁護士にとってみれば、手っ取り早く倒産させた方が仕事として楽な場合もある。ノウハウのない先生に相談すると、本当はやり直せるものも倒産させられてしまったり、それこそ私的整理で対応できるものも民事整理にされてしまったり。こういった事例は枚挙に暇がない。ここでもセカンドオピニオンが求められるということだ。

先述した宮原一東先生も「弁護士からすると破産手続きの方が楽」と語る。

「破産申し立てをして、会社を畳んで、従業員を解雇して終わりです。しかも破産手続きをした事実を誰からも責められることはありません。弁護士が手っ取り早く利益を得るために本来ならば守れた従業員の雇用が失われ、連鎖倒産も起き、私的整理なら5割返せたかもしれないのに…これは問題だと思います」

⑩弁護士に登場してもらうタイミング

そして私的整理の手続きには弁護士が登場するタイミングも重要となってくる。時期が不適切だと、金融機関に預金を凍結されてしまうこともある。そのために機が熟するまでは弁護士は法律相談だけ受けておいて潜伏して準備を行なう場合もあるそうだ。これらの一連の作業は培ってきた経験がものを言うので、弁護士の人選は非常に重要なポイントになってくる。

私的整理を行った後の再生計画が順調に行けば、金融機関もしっかりと評価を改めてくれる。もちろん再生計画に着手した直後の評価は最低ランクまで落ちる。しかし、再生計画をしっかりと履行する事ができれば金融機関からの評価は上向く。諦めてはいけない。

⑪会社をダメにした経営者は退場すべきなのか?

これは一概には言えないが、概ね否である。宮原先生に語ってもらおう。

「経営者が会社に残り続けることができる事実は経営者本人にやる気を産みだし、経営努力が効果的に発揮されるケースが多いです。再生計画の協議の段階で現経営者が退かなくてはならなくなったとしても、親族が引き継ぐなどの代替手段を取るなどの解決策もあります。

多くの場合、最終的な鍵となるのは“経営者の熱意”しかありません。経営者が本気で取り組めば大抵の案件はどうにかなり、負債整理も乗り越えることができます。何が何でも会社を再建するという決意、従業員を大切にすること、その上で数字・管理・関連性の意識を徹底して企業経営に打ち込むことが再建の秘訣です」

経営者以上に自分の会社を愛している者はいない。愛のない再建は足取りも覚束ないということか。

⑫再建時に絶対やってはいけない従業員との接し方

再建が上手くいくかどうかを左右するポイントとして、「経営者の熱意」の他にも重要な要素は有る。従業員のフォローだ。この点は特に重要だと宮原先生は語る。

「従業員の方のモチベーション・忠誠心の低下は簡単に取引先に知られてしまって売上低下、取引停止の原因となります。私が私的整理を手伝った企業の中には、「給料遅配を何ヶ月やっても皆ついてきてくれたから大丈夫だ」と豪語されていた方もいました。

こうした考えは大きな勘違いです。従業員一人ひとりにも生活があります。その生活との間で板挟みになった苦悩は一定の許容度を超えると愛社精神を失わせます。経営者が理解すべきは従業員の方の良心に甘えてはいけないという点です。人には限度というものがあることを知るべきです。

また、消費税・社会保険の支払いを止めたことで会社が回っているから大丈夫という考えも捨てて下さい。民事再生を行っても税金・社会保険は免除の対象とはなりません」

経営者は孤独だ。「社長と副社長との間の距離は、副社長と新入社員との間の距離よりも遠い」と帝人元社長の大屋晋三は言ったが、ましてや倒産を目前にした際に相談できる相手となると、言わずもがな。精神的に参らないはずがない。

月並みな言葉しかかけられないが、諦めなければ活路は開ける。しかし、窮境に陥った際のルールを知らなければ上手く立ちまわることはできない。一つ言えるのは、弁護士への相談だけは、お早めに。

◆取材・文:加藤俊

【プロフィール】​
宮原一東(みやはら・いっとう)…東京都生まれ、北海道、京都でも生活する。上智大学法学部卒業。弁護士・中小企業診断士。私的再建などの事業再生を主に扱っている。著書に『社長・税理士・弁護士のための私的再建の手引き』『社長・税理士・弁護士のための民事再生の手引き』(いずれも税務経理協会)『取締役のための会計不正のはなし』(中央経済社)などがある。

桜通り法律事務所
http://kaishasaiken.com/

〒103-0025 東京都中央区日本橋茅場町2-3-6 宗和ビル7階
℡03-6661-6553

(提供:Biglife 21)

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