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なぜ、中堅社員ほど、やる気を失うのか? 山本 寛(青山学院大学経営学部教授)

職場における「中だるみ」の原因とは!?

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(写真=The 21 online)

 

入社から10年、20年も経つと、良くも悪くも仕事がルーティン化し、毎日機械的に働いている人もいるのではないだろうか。そして、次第にやる気を失ってくる……。30代、40代の中堅社員が、職場でモチベーションを維持できない「中だるみ」状態になるのはなぜなのか、キャリアデザインの専門家である山本寛氏にうかがった。

なぜ中堅社員ほどやる気を失っているのか

あなたの職場にも「中だるみ」に陥っている中堅社員はいないでしょうか。3、40代になってくると、仕事も同じようなことの繰り返しで、目標達成もほどほどで頑張りすぎなくていい、そんな“落としどころ”が見えてくるもの。こうしたマンネリ化はどんな職種であっても直面する問題です。

だからといって、「本人のモチベーションの問題」のひと言で片づけてしまうのは誤りのもと。とくに最近の傾向として、組織の抱える問題が一因となって、やる気を失う中堅社員が増えているのです。

組織側の原因は、いくつか考えられます。

一つは、日本企業全体の傾向として、昇進が停滞していることが挙げられます。人材不足や長引く不況の影響もあり、課長や係長などのポジションをなくす「フラット化」を導入する企業も増えていますが、中には部長とヒラ社員しかいない職場もあります。さらに、管理職の平均年齢も上昇。10年以上のキャリアを積んでも、思うように昇進・昇給がかなわない社員が増えているのです。

ポジション自体がないか、いつ空くかわからない状況では、“次のポジション”という目標が不明確なまま働き続けることになり、モチベーションが上がりません。また、昇進の機会がないと、会社員生活の中での区切りがつけにくく、これも仕事のマンネリ化につながってしまいます。

さらに、近年、どの業界においても人材不足が深刻化しています。新入社員が入ってこないために、中堅になっても若手がやるような単純作業を担当せねばならず、ギリギリの人員で回すから、仕事量も増える一方。中堅社員側からすれば、毎日ヘトヘトになるまで働いても、成長や達成感といった手応えが一向に感じられない……。

こうした職場要因が重なれば、次第にやる気を失っていくのも無理はありません。そうした報われなさが恒常化すれば、挑戦する心を失い、受け身になっていきがちです。

「自分の職場」以外を見ることが大切

人がやる気を起こすのはワクワク感があるとき。新しいことに直面したり、やったことのないことに挑戦するときにワクワク感は生まれます。

目標を見出せず、中だるみしている社員にワクワク感を取り戻させるために会社がやるべきことは、“変化の刺激”を与えることです。要所要所で変化の刺激を与えていかなければ、社員の成長は停滞し、その結果として、会社、組織の成長も望めなくなるのです。

中だるみしている中堅社員は、表面上はやる気のなさ、成果の停滞といった問題を抱えていますが、経験も豊富で実行力も備わっているため、うまくマネジメントすれば戦力となり得る存在です。

それでは、どんなテコ入れ策が有効なのでしょうか。まず、するべきことは、「ジョブローテーション」を積極的に行なうことです。せっかく一人前にしたのだから他の部署には回せない……などという声もあるでしょうが、それでは長期的に見た組織の活性化・発展にはつながりません。

ニトリホールディングスでは、「5年同じ部署にいれば化石になる」という信念のもと、どんどんと配置転換をしており、それが社員、そして会社としての成長の一因であると私は見ています。

また、積極的に「異業種研修」を取り入れることもお勧めします。他業界の、同じようなポジションの同世代との交流や、グループ内企業同士での研修の機会を作ることで、新しい刺激を受けたり悩みを共有したりでき、そこから新たな視点や仕事の工夫を学ぶことができます。

アサヒグループホールディングスでは、グループ外のまったく業種の異なる他社に社員を出向させ、異文化環境での経験を通じて成長を促す「武者修行研修」という研修制度があります。それまでとは異なる仕事内容の職場で部下をマネジメントし、業績アップはもちろんのこと、問題解決や職場改善に取り組むのです。

また、最近注目されている「副業」を解禁することもモチベーションアップにつながります。社員の副業を認める企業は少しずつ増えていますが、注目すべきは、副業をやっている社員の多くが、「本業に役立った」と実感していることです。

副業は本業とは関係ないことをしている人がほとんどですが、本業とは別の視点で物事を考えることが、結果的に本業でのマンネリや行き詰まりを打破するきっかけになり得るのです。ただし、本業に影響をきたさないように、「活動は就業時間外とすること」など、それぞれの会社に合わせた枠組みを決めることは必要だと思います。

さらには「留職」という新しい試みもあります。NPO法人クロスフィールドが提供するプログラムで、社員を一定期間、新興国の団体や公的機関に赴任させ、現地の問題解決に取り組ませるというものです。

半ばルーティンワーク化していた自社での仕事や、それまでの自分の経験を活用して現地の問題や課題を解決することで、社員は自分の仕事の社会的意義を見出し、仕事への誇りや新たな目標を育むことができるのです。

20代、50代でも「中だるみ」は発生する!

こうした「中だるみ」は、30~40代だけに見られる問題ではありません。人材不足がますます深刻化し、転職市場が活性化していく時代においては、年齢やステージに応じた人材マネジメントを行なうことで、優秀な社員をつなぎとめる必要があります。

たとえば、20代後半の社員は仕事をひと通り経験し、仕事への慣れや会社への不満が噴出しやすい世代。この時期に資格取得や転職を考え始める社員が多いのは、先輩の働き方などからキャリアの限界や不透明感を感じたから、というケースが少なくありません。

いわゆる「キャリア・ミスト(キャリアの霧)」といわれる状況です。このモヤモヤ感を解消するには、先輩がワクワクしながら働いている姿を見せることとともに、20代のうちにチームリーダーやプロジェクトリーダーを経験させ、人の上に立つことや新しい仕事を生み出すやりがいを体験させることが有効です。

リーダーとして働く楽しさを早いうちに経験することが、“管理職になりたくない若手社員が増えている”という最近の問題の解決にもつながるかもしれません。

また、多くの会社では、社員の異動希望などを確認する機会を設けているかと思いますが、そこで出てきた異動希望をなるべく実現してあげることも大切です。とくに毎年同じ部署に異動希望を出している社員がいるとしたら、自発的に新しいことをしたいと思う社員の気持ちをなるべく早く実現させてあげることが、社員のモチベーション持続には大きな効果があるでしょう。

さらに、出世コースから外れた50代以降の社員も、中だるみしやすい傾向があります。こうした社員に対しては、社内に「居場所」を作ってあげることで、“存在意義”を感じさせることが効果的です。

具体的には、それまで蓄えた経験を後輩に教える場を作ることです。本人が得意とする分野で若手社員に教える立場を与えることで、50代以降の社員・若手社員のどちらにもメリットがあるでしょう。ただし、「教える」の範囲を逸脱しないように注意が必要です。

職場における「中だるみ」とは、働く職場の“変化のなさ”が大きな要因となっていることが少なくありません。「やりがい搾取」とならない程度に、社員に課題や負荷を与えて「変化=やりがい」を与えていくことも、これからの人材マネジメントの大きな役割なのです。

山本 寛(やまもと・ひろし)青山学院大学経営学部教授
1957年、神奈川県生まれ。79年、早稲田大学政治経済学部卒業後、銀行勤務、大学院などを経て、2003年より現職。メルボルン大学客員研究員歴任。専門は、人的資源管理論、キャリアデザイン論。著書に、『「中だるみ」社員の罠』(日経プレミアシリーズ)など。(取材・構成:麻生泰子)(『The 21 online』2017年10月号より)

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