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横浜信金がクラウドで大企業と中小企業のマッチング支援 信金では初めての試み

横浜信用金庫(理事長・大前茂氏)がソフトバンク、ぐるなび、楽天など全国300社超の大手企業と同信金の取引先企業をつなぐマッチングなどを提供する経営支援クラウドサービスを同日から始めると発表した。同信金によると地銀・信金業界では初めての試みという。(取材・経済ジャーナリスト 丸山隆平)

新サービス「Yokohama Big Advance(YBA)」の月額使用料は3240円

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YBAの狙いなどを述べた大前理事長(写真=筆者)

 

新サービス「Yokohama Big Advance(YBA)」は大別して4つのサービス――「マッチング」「オープンイノベーション」「情報サービス」「福利厚生」――を提供する。月額資料量は税込み3240円(クレジットカード払い)。

「マッチング」は、大手企業を含めた参加企業が、サイト内で人材や不動産、知的財産、事業承継などの取引先を募集したり情報を掲示したりできる。大企業と中小企業のマッチングだけでなく、中小企業同士のビジネス仲介も可能だ。

「オープンイノベーション」は新しい技術やビジネスを創出するためのプロジェクト仲介。独自の技術やノウハウを持つ企業と他社をつなげる。

「情報サービス」は各種の助成金や補助金、セミナーなど経営に役立つ情報を提供する。セミナー開催や独自取材記事も掲載するという。

そして「福利厚生」は旅行やレジャー、観光、グルメ、ショッピングで割引サービスなどが受けられるものだ。

発表会であいさつに立った大前茂理事長は「YBAは信金が最も得意とするFace to Faceとフィンテック、AIなど最新の技術を融合し、新たな価値を提供する」と抱負を述べた。

横浜の状況について「横浜という恵まれた地盤で地域経済の活性化に邁進しているが、この横浜でも人口減少により事業所数が減少し、地域経済の縮小が進んでいる」と警鐘を鳴らしたうえで、「このような状況下地域活性化のために何ができるか検討を重ねた結果、YBAに結実した。中小企業の販路拡大、事業承継などのニーズに応え、サービスを用意した」と新サービスを始めた経緯を説明した。

同理事長はまた、現下の取引先中小企業の状況について、「取引先企業からは、『なかなか大手企業に知り合えず、そのためチャンスを逃している』という声が多い。逆に大手企業も有力な中小企業を見つけるのが難しいという」とマッチングがうまくいっていない状況に触れた。

また「福利厚生については人材に関わる課題を大手企業の協力を得て良質なサービスを提供することで解決したい。フィンテック、AI、API連携などを推進、先端技術を顕在化させる。YBAは全国に先駆けこうした課題をクラウドにより解決するもの。全国の他の地域金融機関との連携を進めたい」とも述べた。

大手行、地銀よりさらに厳しい信金の経営環境

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(写真=Webサイトより)

 

同理事長の発言で明らかなように、信金業界で初のフィンテックサービスを展開する背景には信金を取り巻く厳しい経営環境がある。

日銀資料から金融機関の基礎的収益力であるコア業務純益を見ると、マイナス金利の影響が大きく、大手行の2016年度は前年比▲5.2%と2年連続の減益。地銀、信金も減益が続いているが、減益率は地銀が同▲12.6%であるのに対して、信金は同▲16.0%。信金は2016年度から少なくとも10年間は収益力が一貫して減少している。

信金は協同組合組織の金融機関で、営業地域が限られている。ビジネスの対象は中小企業で、資金調達の面でみると証券市場からの直接金融は難しく、金融機関からの借入の必要性が高い。

だがメガバンクなど大手金融機関にとっては中小企業に融資先としての“旨味”は少ない。このため、政府にとって中小企業金融の円滑化はこれまで、景気の動向に関係なく常に重要な政策であった。

近年の地域金融に関する政策的な取り組みでは以下のようなものがある。
・2003年3月 リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム
・2005年3月 地域密着型金融の機能強化に関するアクションプログラム(17~18年度)
・2007年8月 地域密着型金融の推進に関する監督指針の策定
・2009年12月 中小企業金融円滑化法(2度の延長を経て、2013年に終了)
・2011年5月  地域密着型金融の推進に関する監督指針の改正
・2013年9月 平成25年事務年度 金融モニタリング基本方針→事業性評価にかかるモニタリングの開始
・2016年10月 平成28年事務年度 金融行政方針→顧客との「共通価値の創造」

金融庁は一貫して、担保・信用保証に頼らない、取引先企業の事業に着目した融資を進めるように地銀・信金に促している。いわゆる「事業性評価に基づく融資」だが、現場ではこれが難しいという声が多い。

「金融庁から事業性評価をやれと言われているが、企業を評価してもそれをどのように実際に顧客支援に活かしていくかわからない」という声だ。

“フィンテック”が進展し、金融業はサービス業になっている。金融機関も取引先企業の抱える様々な問題を解決していかなければ、自身の経営が成り立たなくなるといわれてきたが、そうした懸念が現実のものとなり始めている。